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【ちょっと昔の世界一周】 #40.1 おまけ

今回はイスタンブールで出会った、地元の人たちとのちょっとした出来事です。
本編はこちら↓

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東西の文明の交差路

そう言われるだけあって、イスタンブールの街は活気が溢れている。

歴史ある建物や多くの観光スポットもあることから、それを目当てに訪れる観光客も多い。

そうなるともちろん、そういった人たちにむけた商売も盛んになる。

私のような身なりの旅人に対してでも、買ってくれるはずがないのに高価な商品を買わないかと声をかけてくる。

もちろん本気ではないであろうが、それぐらい勢いのある商売人が多い。

そして、中には真っ当な考えでなく儲けようとしてくる人もいる。

よく聞く話では、高価な絨毯を買ってもらうためにあの手この手で迫ってくるらしい。

アジアでのボッタクリとの戦いを経験すると、そんなものと思っていたが、ツリーの人たちの話では中東の雰囲気を持ったトルコの技はなかなからしい。

とはいえ、私は大丈夫だろう。
そんな考えの私も思わぬ経験をすることになった。

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トルコに来て人もだが建物も含め街の雰囲気が気に入った。
そんな中、今まで見ることのなかったモスクのある風景がとても気に入った。

アザーンを聞きながら眺めるモスクのある景色は、旅を感じられる瞬間でもあったが、なによりモスクの外観の美しさは見ていて飽きなかった。

ツリーの近くにはブルーモスクがある。
少し歩いて見ることのできるその景色はいいものである。

すると、一人の青年に声をかけられた。
彼の名前はアフマド、いかにもムスリムらしい名前だ。

「ニホンジン、ワタシ、トモダチイッパイイルヨ!」

最初の会話でなんとなくだが感じた

『こいつ、めんどくさい奴だ…』

基本的にそう感じたらスルーするのだが、こいつは意外としつこい。
尚更めんどくさい…
無駄に距離を詰めてきたり、馴れ馴れしい。

しまいには「俺の写真を撮ってくれ!」と言い出す…

なので適当にあしらっていたが色んな話題の中で、地元で人気の飯屋が近くにあると言い始めた。

他の話は一切興味なかったが、地元の人に人気ということで気になった。

今までの旅の中で、地元の人に人気があるというのはいい店に違いない。
知っておいて損はないと思い、場所を聞いてみた。

時刻は昼前、なら連れて行ってやるしついでにご馳走してやる!と彼は言う。

店の場所を知るだけでいいが、奢ってくれると言うなら行ってもいい。

若干の胡散臭さを感じつつ、私はアフマドについて行った。

道中もずっと話しかけてくるアフマド。
会話をすることは好きなのだが、さすがにしつこい。

と、意外とすぐに目的地に着いた。

確かに人気店らしく、昼食の時間ということもあり店内には多くの人がいる。

見た感じ料理も美味しそうだし、こいつは意外といいやつかも...

そんなことを考えていると、アフマドは店の中に入っていく。

私も、、、と入ろうとすると、人が多いからここで待っててと言われ、とりあえず彼に任せることにした。

戻ってきた彼が一言。

「ヒト、イッパイ。ダイジョーブ、ワタシノ、イエデタベル!」

こいつ何言ってんだ?

謎の話になったが要約すると、混んでいて席がないから注文して彼の家で食べよう!ということらしい。

確かに、料理らしき物を運んでいる人を見たことがあったが、こういった配達はよくあることらしい。

しかし、一度は信じたが再び私の勘がなんだか変だと言っている。

じゃあいいや。そう言って帰ろうとすると、アフマドが焦る。

家と言ったが、お店だから大丈夫!
ここから見えるあそこだよ!
と指を指して必死に食い止める。

しばらくそのやりとりをしていたが、店の人もこいつの家は確かにそこだ!と言っているしそれならばとそうすることにした。

メニューを見て気になった物を注文し、アフマドについて行く。

確かに目と鼻の先といえる建物に案内される。
そこは、絨毯屋だった。

中に入ると、年配の男性が椅子に座っていた。

アフマドと何か話をすると、私の方を見てここに座りな!と場所を用意してくれる。

疑ったものの、意外といい人なのかも...
そんなことを考え腰を下ろし、再びアフマドのしつこい話を聞いていると料理が運ばれてきた。

宣言通りお支払いをしてくれ、食事を始める。
評判通り美味しい料理だった。

食べ終えたので、さてさすがに帰ろう!と思ったら、アフマドではなく店の男性が話しかけてきた。

で、絨毯はどれにする?

そこからは一騒動である。

ご飯を奢ったから絨毯を買えというアフマド。
絨毯が欲しいから店にやってきたと思っている絨毯屋。
絨毯の〝じ〟の字も言ってないだろ!と言う私。

最終的に周囲の人が振り向くぐらいの怒鳴り声をあげ、警察を呼びに行こうとした私の意見が通り店を後にしたがなかなかの体験ができた。

やはり、まだまだ未熟とはいえ私の〝旅人の勘〟は当たるようだ。

自分を信じるいいキッカケになった。

*****

アフマドとの一騒動で絨毯屋は特に気をつけるようにしたが、全く違う出会いもあった。

当てもなく歩き回っていると、段々と道も覚えてくる。

『ここを抜けて階段を登れば景色がいいんだよな〜』

そう思い、絨毯屋エリアを歩いて行く。

すると「コンニチハ!」と声がかかる。

アフマドの件の後だったので、絨毯屋には無意識に警戒していたが、今度はそれほどの悪い雰囲気ではなさそうな三人組だ。

こんにちは!と返すと、ジャパンか?と聞いてくる。
なんてことのない雑談をしているうちに、一人が

「ヒトリカイ?カノジョイル?」

と聞いてきた。
いないよ〜、だから一人旅!と言った感じで答えると、隣に座ってる一人と肩を組み

「こいつはガールフレンドいるけど、遠くに行っちゃって寂しくて毎日泣いてるんだよ(笑)」

と教えてくれた。

プライベートを勝手に見ず知らずの外国人に教えられた青年は、照れ臭そうにしながらもそうなんだよ…と苦笑い。

お互いに最低限の英語ながら、そこからしばらく男同士で遠距離恋愛について語り合う。

アフマドの時とはえらく違った有意義な時間を過ごし、最終的に彼女への気持ちを大声で叫んでスッキリするという解決法でひとまず話がまとまった。

学生時代も感じたが、国は違えどやはり女性に比べ(自分も含め)男性の方が単純なのだろう。
こんな内容があってないような話でも楽しく過ごせる。

絨毯屋も人それぞれだな…

そんなことを考えながら、その後も散歩をして過ごしていた。

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