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BECKのライブ映像を見て感動した話

表題の通り、BECKのライブを見て感動した話をしたいと思う。

先日私はYou Tubeのリコメンドに誘われてBECKが2003年に行った野外ライブの映像を見たのだが、それがもうすごかったのだ。時間も場所も超えて、画面越しにグイッと心臓を掴まれたような、そんな感覚があった。

【矛盾する要素の両立】

暑そうな快晴の野外会場には多くの人がひしめいていた。そしてギターを持った童顔の男がフラッと出てきて演奏は始まる。

最初は自由なイントロ(彼のギターは本当に自由なんだ)。そしてお馴染みの、『Loser』のリフに移行する。タンタンタータターン♪90年代のロック史を代表する名曲である。そして彼はあの不思議な歌詞を歌いだす。ドラムとギターとラップ調の歌が、緩いようでタイトに締まった演奏をする。ベーシストは横で踊っている。やがて歌はサビに入り、彼はこう歌う。「I'm a loser, baby. So why don't you kill me?」

そこには、幾多の矛盾する要素が同時に存在していた。

気怠い熱気。

シュールなリアル。

緩くタイトな演奏。

抑制された興奮。

諦めに見せた反抗。

どれも矛盾するのだが、それは確かに同時に存在していた。その違和感が新しくて、それは自然でもあった。ものごとの本質を見せられたような、そんな気がした。

芸術は、と括ってしまうのは乱暴だが、そういった矛盾を全て内包して1つの作品に仕上がっている芸術がある。それはとても絶妙なバランスで出来ていて、奇跡的な現象だと思う。この日のBECKの『Loser』のライブは間違いなくそういったものだった。その凄みにあてられて、私は食い入るように画面を見ていた。

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