「プロミシング・ヤング・ウーマン」は女性監督版「キル・ビル」
男どもが集うパブで、泥酔したイイオンナがパンツをちら見させながら寝ている。
ジェントルマンを気取った男が優しく声をかける「送っていこうか?」
オンナはうなずきタクシーに乗る。酔って吐きそうになりながら。
男は「うちに寄っていきなよ」と誘いをかけ、オンナは車を降りる。
部屋で「横になりたいわ」とベッドに横たわると男が覆い被さってくる。
そしてパンティに手をかけた途端、オンナはこういう
「なにやってんの?おまえ」
Promising Young Woman とは、前途有望な若い女性。医学部でトップの成績をおさめながら中途退学したカサンドラ(キャリー・マリガン)。今は場末のコーヒーショップで働く身。店のオーナーはLGBTの女性だ。
そこに同級生だったライアンがコーヒーを買いに来ることで、物語は動き出す。
数年ぶりの大学の同期との交流は、彼女の中にくすぶっていたものに火をつけた。
娘の華やかな将来を期待していた両親。ボーイフレンドもおらず夜遅く帰ってくる生活にも不安を募らせる日々。
アラサーの彼女をこんなにしてしまった理由は何か?そこにある秘密とは?
2021年度アカデミー賞脚本賞を受賞した本作は、高学歴だからなにやってもいいと勘違いしてる、イケスカナイ男どもへの怒りの一撃。オンナを性の道具としか思ってない、犬にも劣る畜生どもへの報復。
男性目線でない、女性目線で描くこの作品は、だからこそ〈痛み〉が男の俺にも伝わる。
ストーリーの面白さ、達者な演技陣、テンポの良いカッティング。良いものを観た。映画ファンを自認している人は今年マストの一本である。
製作・監督・脚本のエメラルド・フェネルは才能溢れる女性。このプロットは、ほんと面白い。次作も期待。
主役のキャリー・マリガンは、「17歳の肖像」で見て以来、身体は小さいながら〈本当に強い女性〉を演じてる気がする。
カフェのオーナー役のラヴァーン・コックスは、LGBT擁護を描いたドキュメンタリー「トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして」で知っていたので、活躍しているのが喜ばしい。
日本では、2021年7月9日より先行ロードショー。
てなことで。