10月11日 余念なく遊ぶ。
エレバンに着いて早々、フライトキャンセルを知らせるメールが届く。旅行会社や航空会社へ問い合わせる。航空会社の予定便の時間変更で乗り継ぎができなくなったとのこと。振り替えの便も全部満席で、できることは払い戻しをして、新しいチケットを買うしかないということを、散々文句を垂れながら、理解する。
そしてネットで鹿児島への片道チケットを探してみても、乗り継ぎ国のビザの兼ね合いもあり20万のチケットしかないと悟る。(返金が10万くらいくると思われるから追加10万か)
さらに決済を切ろうにもクレジット決済の確認で、SMSでの暗証番号の認証がうまくいかない。
3時間も頭をかきむしりながら、イライラ最高潮でスマホとにらめっこしていた。その間、ちょくちょくカザフスタン人のアランが横からニコニコの笑顔で写真を撮ろうとスマホを向けてきたり、日本では何の仕事をしているのかと聞いてきたり、俺は日本のアニメが好きなんだと言ってきたりした。私はうざったいと思いながら粗雑に答えていた。もう、この件については明日クレジット会社に電話してみるしかないなとスマホを置いたとき、アランが「ナンチャラカンチャラナンチャラカンチャラ、ストリップ!ストリップ!」と身振り手振りで楽しそうに言った。多分「終わったか?そんな暗い顔するなよー。大丈夫なんとかなるよ。こういう時は、ストリップだ!ストリップ!ストリップへ行こう!」と言っているのだなと解釈し、心も体も頭も疲れ切っていたが、差し出されたショットグラスのジンを2杯クイッと飲むと、もうどうにかなるかという気になり、アランとトムに連れられてストリップに行くことにした。
タクシーを拾い、10分走ったところのネオンがともる一体がストリップクラブだった。入り口で1万ドラム4000円払う。大柄なセキュリティがボディチェックする。鹿児島のダンスクラブよりも少し広いくらいで、外観の割には狭く感じる。うす暗い店内に音楽が鳴り、赤や青のライトがともる。全部ソファー席で、そのほとんどがお客さんで埋まっていた。ソファー席の前に、手すりに囲まれ、天井からポールがおりたお立ち台がある。その台の上で見事に綺麗な女の人たちが、ある人は服を着て、ある人は半分着て、ある人は一糸まとわず、音楽にあわせて寝転んで足を上げてみたり、前屈してみたり、ポールに捕まってみたり、腰を振ったりして踊っていた。
私らがボックス席に座ると、テーブルの上には何やら意味深なメニューが置かれてあり、song order 10000 /consumation with a dancer in the holl 10000/in the room 20000/privat dance 400000 一番下に行くと700000のコースもあるから、お金を積むほど深いサービスがあるようだ。アランとトムは意外にも居酒屋にでもきたようなテンションでビールとジンを頼む。ジンで乾杯する。私たちに気づいた見事に綺麗な裸の女の人らが、獲物を見つけた女豹のように、こちらに近づいきて目の前でスッポンポンで淫らに踊る。何人も代わる代わる踊る。だんだんと、よくできた人形が何かに操られて踊っているように見えてきて、こんな綺麗な女の人の裸も、当たり前のように開けっぴろげで、見えるもの全部見えてしまったら何も興奮もしないんだなとボーッと口を開けてみていた。やっぱり見えるか見えないかとゆう具合がいいのだ。
でも、こういうところで飲む酒はうまいもので、ジンを何杯も飲んだ私たちは完全に酔って
しまっていて、いつの間にかそれぞれの横には女の人がついていた。私の横に座った人は、細身の色白の人で「ルゥーシア」「ルゥーシア」と言っていたからロシアの血が混ざっているか、ロシア出身かなんかだと思った。とても綺麗な目で、ターコイズブルーに幾何学模様の黒目をしていた。彼女は、このお酒を飲ませてくれたら「セェックス」。プライベートルームに連れて行ってくれたら「セェックス」と、ことあるごとに「セックス・セックス」といってとてもとても貪欲に注文をほしがった。2時を過ぎ、結構な額を3人で払って、店を出て暗い道をトボトボ歩いていると、追い剥ぎにでも会ったかのような、くらーい気分になった。
2軒目は、賑やかなパブのような立ち飲みのBARに入る。ここでもまたジンを飲む。3時を超えて店を出る。
3軒目は、懲りもせずまたストリップクラブに流れ込む。今度はさっきの店の3分の1の値段で、内装やあれもこれも3分の1くらいのところだった。カウンターには地元の人らがつまらなそうに酒を飲んでいた。ここも開けっぴろげで踊ったりしていた。
散々飲んで、みんな酔っ払ってしまって、朝方宿に帰ったときには、誰も玄関の鍵を開けられず、何をするにも突っ伏して笑い、もうチケットの不安もヒッチハイクの疲れも吹き飛んでしまって、余念なく遊ぶことができて、とても気持ちよくベットで眠ったのである。