10月8日 最初の街、アラヴェルディ
朝10時の乗り合いバスでトビリシを出発して、15時00分、アラヴェルディ到着。
バスの車窓から見えた鉄さびにまみれた茶色い塊がアラベルディだった。この街は曇り空がよく似合う。街の半分を占めてしまいそうな巨大な採掘場からは煙も出ておらず人の気配もなく廃墟となっている。コンクリートブロックの団地群は、窓ガラスが割れて、ベランダも壊れて、何もかも壊れてしまっているが、洗濯物があちこちに干してある。ここの人は自分が使わない部屋はどうなってても気にしないのかもしれない。道を走る車は旧ソ連時代のLADAがほとんどで、たまに古いopelが車体にむち打ちながら走っている。
歩いていると、今は使われいないロープウェイ乗り場が茂みの中にそっとあった。入り口の窓ガラスが割れている。のぞき込むと向こう側に、高い崖とそこへ続くロープと空中にぶら下がったまま止まったゴンドラが見える。そこから入り込む光りを頼りに、下に散らばった窓ガラスをバキバキ踏みながら入ってみることにする。左には男子トイレと女子トイレ、排水溝のくさい匂い。鏡に自分の顔が写り、ドキリする。右側には下へ降りる階段があり、机や椅子やらが投げ込まれ塞がれている。その次の扉は少し開いていて、ゴンドラを引き寄せる大きな車輪がある。階段を5段上がり、ガラスの割れたチケットもぎりのところを超えてゴンドラ乗り場にたどり着いた。カメラを構えて、向こうの山に伸びるロープと途中で止まったただままのゴンドラを写真におさめる。後ろから誰かにぶん殴られそうな気がして、なんども振り返りながらシャッターを切った。
ホテルは、街の人に安くていいホテルを聞いて、そこに向かった。コンクリートブロック造りの古いホテルだった。入ると奥にレセプションがぽつんとありそこだけ電気がついている。おじいさんが一人椅子にすわってこちらを見ている。パスポートを渡してチェックイン。空間に物がないから声が響く。
おじさんが鍵をもって部屋まで案内してくれる。洋風のお化け屋敷みたい。しかし、案内してもらった部屋がベッドが4つもある広い広い部屋だった。ニコッと笑って去って行くおじさんに、とっても、おもてなしをしてもらった気分になった。
街をあるく。ATMを聞くと、あっちだという。しばらくして追いかけてきて、やっぱりこっちだったと教えてくれる。ATMで手間取っていると、おじさんがやってきて、銀行の人に掛け合ってくれる。銀行の人も何度もATMにチャレンジしてくれる。後ろには5人並ばせてしまったが、誰も嫌な顔せず待ってくれる。道行く人に挨拶するとみな笑顔をくれて受け入れてもらえている気分になる。コーヒーマシンの前でどうやって使うのかと悩んでいると、男の人がやってきて、こうやって買うんだぜと奢ってくれる。
誰も彼も心からのおもてなしをしてくれているようで、もうアルメニアが好きになりつつある。