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【読書感想文】「嫌われる勇気」の哲人は勇気100%だった

「嫌われる勇気」とは。

フロイト、ユングと並び心理学の三大巨頭と言われるアルフレッドアドラーの思想を青年と哲人の対話という物語形式でまとめた本。

どうせ自己啓発本だろうと手が伸びなかったあの頃の自分から、「こんなに話題なんだからまず読んでみよう」と意識が変わるまで数年かかった。

結果は、なるほど面白い。
楽しみながら最後まで読み進めてしまった。

気になった点、面白かった点などを自分用にまとめてみた


●トラウマは存在しない
●人は怒りを捏造する
●人は常に変わらないという決心をしている
●すべての悩みは対人関係の悩みである
●他者に承認を求めてはいけない
●他者の課題に踏み込まない(自分の課題には誰1人介入させない)
●変えられるものと変えられないもの


アドラーの思想は目的論に基づくものだから
上記のような言い分になる。、

例えば…親が離婚して寂しい想いをしたから非行に走る、不登校になる、自傷行為をする(原因論)ではなく、親を困らせるために問題行動に出た(目的論)

例えば…ひねくれていて短所ばかりの自分とは誰も付き合いたいとは思わないから、自分の殻に籠る(原因論)ではなく、他者との関係の中で傷つかないために自分でバリアを張る(目的論)

これがアドラーが唱える勇気の理論。
そして「トラウマは存在しない」と言い切る理由でもある。


怒りに関しても、そう。
怒りとは目的を叶えるための手段であり道具である。怒ってるから怒鳴るのではなく怒鳴るために怒りのパワーを使っている。

つまり順番が逆なのだ。
ムカッときたから、つい怒鳴ってしまった、ではなく、怒鳴りたい→よし、さっきの嫌味をパワーに→「バカヤローー!!」という流れになる。

これが、「人は怒りを捏造する」の根拠である。

そして私たちはライフスタイルを変える勇気を持ち合わせていない。「変われない」のではなく「変わらないこと」を選択している。

これに関しては、個人的に気に入った言葉がある。

神よ、願わくば私に、
変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、
変えることのできる物事を変える勇気と、
その違いを見極める知恵とを授けたまえ

アメリカの神学者、ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉


無意識に変わらないことを選択しているうちはここまで考え至らないかもしれないけど、変わりたくて模索している道中ならこの祈りが胸に響く。

変わる、と言っても私が変わって変えられるのは私だけ。他者をコントロールしてはいけない。

これが「なぜ他者に承認を求めてはいけないのか」に対するアンサーである。

青年は「認められたい、受け入れられたいという欲求は当たりまえ」と言う。
哲人は「他者の期待を満たすために生きているのではない」と答える。

自分を好くか嫌うかは他者の課題であり、自分の課題ではない。他者に気を使うあまり、悪く思われたくない、認めてほしいと願うのは自己への執着が強く課題の分離ができていないタイプ。

馬を水辺に連れて行くことはできるけど、水を飲ませることはできない。

課題の分離は「嫌われる勇気」のメインテーマである。

何か問題に突き当たったら、これは誰の課題なのかを考える。何を与えてくれるかではなく何を与えられるか、自己への執着を他人への関心に切り替えていく。

これが幸福への第一歩だと哲人は説く。

「何が課題の分離だ!いったいどこの新興宗教だ!」と憤慨する青年に、「自由とは、他者から嫌われること」と教える哲人。

…ガラッと話は変わるが、哲人と青年のやりとりにはニヤニヤさせられる。
哲人の教え一つひとつに過剰反応し、スルースキルは皆無。何度目的論の話を聞いても、「そんな馬鹿な!」と新鮮な驚きを返す青年。

私に漫画が描けたなら、この2人のやり取りを4コマ漫画でも何でもいいから描き上げて、みんなに見せたいと思ってしまった。

…と、脱線したけど、結局のところこの本が言いたいことは、「勇気を持て」ということだと思う。自分と自分以外にしっかりと線を引き、他者評価ではなく自己評価を大切にするべき。

◇ありのままえを受け入れる「自己受容」
◇裏切りを恐れない「他者信頼」
◇他者に無条件の信頼を寄せて人々を仲間だと思える「他者貢献」

この3つの円環構造を理解し受け入れること。貢献感が己を幸せにするけど、他者からの評価はいらない。つまり主観での貢献できているという実感が大切。

そもそもひとりぼっちでは実現しないこの幸福論は、青年の言う通り厳しいところがあるのかもしれない。でも、私は割としっくりきてしまった。誰かと幸せになりたいし大切な人の喜ぶ顔が見たいと自然と思う。笑顔にできれば私も嬉しい。そんな単純なことなんじゃないだろうか。あとは自分の言動、行動全てに責任を持つこと。

個人的に、とても楽しめた本だった。流行りものを敬遠するのは私の悪い癖なのかも。大勢が良しとしているのは、きっとその「時」人気になるワケがある。「今」を知るわかりやすい材料になるはず。これからはもっとアンテナを広げて受け入れていきたいと思った。

そういえば友人にこの本の話をした時、「課題の分離って一見冷たく感じるけどある程度は必要だよね。特に喧嘩した時、相手のせいにするのに役立ってる」と言っていて「なるほどな、怒ってるのは相手の課題だもんな」と妙に感心してしまった…まあ都合よく解釈するば、の話だけど。

最後に哲人と青年のほっこりするやり取りで締めます。

青年「先生を信じます、歩きましょう共に、もはや論破など申しません」
哲人「やっと若者らしい笑顔を見せてくれましたね」

おわり











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