「シニア」「ローカル」のメディアにデジタル出版をオススメする理由
先週、金風舎の新刊『仙台ジャズノート』をプリント・オン・デマンド版で発売しました。今週19日に電子書籍版発売予定です。
『仙台ジャズノート』出版の経緯
とても素晴らしいベリーグッドタイミングで、先週の東洋経済オンラインに「仙台ジャズノート」のもとになった連載が掲載されたメディアTOHOKU360と、著者の佐藤さんとジャズノート連載の経緯がまとめられた記事が出ています。
まずはこちらをご覧ください。
記事で紹介されているとおり、著者の佐藤さんは、元河北新報の記者で在職中にデジタル部門を立ち上げられた大先輩です。
地方新聞社の電子書籍関連事業で地方を巡っているときに、アドバイスを頂こうと仙台までお会いしに出向きました。佐藤さんの新聞社でのデジタル化の奮闘については、20年分のブログ記事まとめた本を4年前にデジタル出版しました。
このときに佐藤さんにはじめてプリント・オン・デマンドを体験して頂いたわけですが、同時に私もTOHOKU360の安藤さんにもお会いして、ローカルメディアでの発信の現状について知る機会を頂きました。
デジタルとオフラインの組み合わせ
そこで私が感じたことは「情報を本当に必要とする人に届けるためにはデジタル(ネットコンテンツ)とプリント・オン・デマンドの組み合わせは最適かもしれない」ということでした。
シニア世代にもSNSは普及し始めていますが「これを読んでください」というURLを送るにしても、サイトのURLと本の販売サイトのURLを送るのでは届く情報の密度が違います。
また、体系立てた情報をまとめて読むのにオンラインは適していないので、それをオフラインにできる電子書籍の有効性は高いですが、シニア世代には紙の本の親和性が高いのは言うまでもありません。
『仙台ジャズノート』の企画を検討する際に、佐藤さんと話をしたのは、「ジャズと街」というテーマ設定でした。各地に音楽が好きで活動している人がたくさんいて、その人たちと「本」を通じて出会うこと。本書がネットメディアと連携することで、その機能を果たすことをイメージしています。
書店に本が並んでそれをSNSで宣伝するのが一番最適ですが、この数年全国を巡って思うのは、そもそも書店が減っていること、書店流通販売、いわゆる商業出版で企画を実現させることが難しいこと、などからプリント・オン・デマンドでの出版をご提案しました。
コンテンツのデザインがポイント
今回はそういったメディアをDXするという観点から(先々のサービス化も視野に)、佐藤さんにお願いして試験開発的な取り組みで進めさせていただきました。
制作面ではデジタル化した工程でコストダウンとスピードアップを図りましたが、最大のポイントは、発信するコンテンツ(原稿)をどのようにデザイン(設計)するのか、その「効果」を考えることです。
『仙台ジャズノート』は、すでに原稿がある前提での出版企画ですが、原稿がない状態から本の出版を想定して原稿を執筆し、その原稿を情報発信に活かすこと、本として出版した後に、その本を認知してもらうために必要な原稿と発信についてのノウハウ。このあたりがポイントになりそうです。
DX、デジタルトランスフォーメーションの言葉が独り歩きしていますが、殆どはデジタル化のためのデジタル化のように思います。
デジカルとしては、「伝えたいことを読まれるものに」という考えで、「読まれるもの」にする点に重点をおいた出版の”デザイン”サービスを提供したいと考えています。
地方のシニア世代の方に役立つサービスに
ジャズの世界は、団塊の世代とそれ以上の方々の現役ぶりが半端ないということです。そうだろうなと思うとともに、実際に今回開発するデジタル出版サービスも、メインターゲットを地方在住のシニア世代の方にと考えています。
この点において、年齢的には団塊Jr.な現役世代としては、デジタルしか分からない若い世代と繋ぐ意味でも、「編集者」の立場で企画相談から引き受けていく必要があるんだろうなと感じています。
最後に
ぜひ『仙台ジャズノート』をご購読頂き、「シニア」「ローカル」のメディアDXの最先端をご確認ください。
ジャズ聴き45年、学生&社会人バンド歴48年の元記者・編集者が書いたジャズレポート。とは言っても、主要なジャズメディアの「好物」である世界に名だたるミュージシャンが登場するわけではありません。身近なライブ会場やストリートで見聴きした「身近な演奏者たち」へのアクセスの記録です。
登場するのは小学生から80代のシニア世代まで。たとえば小学校低学年が自分の体よりも大きい(?)管楽器にぶら下がるようにして演奏しています。ボランティアミュージシャンの指導を受けながら巨匠カウント・ベイシーのスタンダードを承継しています。水準ひとつ飛びぬけているプロの周囲には、アマチュアとプロの区別なく演奏者が集まります。レッスンシステムがさまざま整備されてきたおかげで、アマチュアの中には技術的にはプロをもしのぐ演奏者も珍しくありません。アマチュアたちにとっては市民活動的な練習の繰り返しが命。市民センターや音楽スタジオに定期的に集まっては音楽を楽しんでいます。
本書はそうしたローカルの現場を支えるミュージシャンたちへの取材の記録です。特にインタビューを隅々までお見せすることに最大の注意を払いました。ニューヨークに行かなくても、ニューオーリンズには行けなくとも、身近な現場で繰り広げられるジャズシーンを堪能してください。
長年、仙台、東北を主な取材エリアとしてきた筆者が、定年後、念願かなって身近なジャズシーンへの取材を敢行しました。「地域」「地方」「地元」にあるニュースをネットを通じて世界に発信したい!そんな共感でつながった仙台発のネットメディア「TOHOKU360」で連載を始めたとたんにあの「新型コロナウイルス」が・・。全世界のエンタメ現場同様、身近なジャズシーンも動きがほとんど停止状態に追い込まれました。
その窮状から抜け出すために多くのミュージシャンがひそかに自己練を重ねました。彼ら彼女たちが中心になり「三密」対策を十分に講じた演奏の場を自ら主催し、リモートによるネットライブを重ねた事実をしっかりとらえることができました。身近なミュージシャンたちの音楽にかける前向きな姿勢は、本書のための取材を終えた時点よりもさらに増勢の一途。そのスピードと質の高さを自分なりに楽しむことができているのは、取材者冥利に尽きると言っていいのだと思います。
ジャズに限らず全国各地には、それぞれに身近な現場が必ずあるはずです。ブログなどでリポートを書いてみませんか?仙台とネット上で連携しましょう。