【連載小説】母娘愛 (26)
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【連載小説】母娘愛(25)話 までのあらすじ👇
<原爆死没者慰霊事業へご支援を!>の横断幕のズレを直している山岡のスマホが、胸のあたりで鳴った。「お~!佐伯の婆さんが、玄関に着いたってか・・・」スマホにオウム返しする山岡の声が、本番スタートの合図になった。
「さあ~行こうでぇ!」山岡の掛け声で、会場の動きは活発になる。静かに威厳をたたえていた、ハチゲンですら背筋を伸ばし、マスクの位置を直したようだ。
銀行員役の亀田良子は、お札を数えながら、寄付者役に何やら話しかけている。その後ろに立つ警備員は後ろ手に組み、その光景を神妙な面持ちで眺めている。その横には、ジュラルミンケースが、横積みされている。
エレベーターホールあたりだろうか、一際大きな女声がした。「今日は、お世話になります」佐伯恵子の声に間違いない。山岡は会場のドアへ小走りで駆け寄った。
「こちらへどうぞ!」佐伯の婆さんを案内する、NPO役の松本の声が、会場前の細長い廊下に響いている。山岡は頃合いを見てドアのノブを回した。
「お暑い中、本日はご足労いただきましてありがとの」「いえいえ、松本さんのお車は、エアコンがよう効いて、ぶち快適じゃったけぇ・・・」恵子は微笑みで応えた。
恵子が部屋へ入ろうとしたとき、カメラクルーが寄付者役とのやり取りを始めた。「ホットしたよ、おかげさまでスムーズにご寄付ができた。ありがとうの!」年配の紳士が、インタビューされているところだ。
恵子はその光景に少し動揺したようで歩みを止めた。「佐伯様!こちらへどうぞ!」ニセNPOの松本が、そんなことにお構いなしに恵子を席に誘う。
ここまでは上々だ!山岡は心の中で安堵し、続くスペシャルストーリーの開幕をひとりごちていた。
恵子がキャリーケースから、現金を出してテーブルに並びかけたとき、なんだか、廊下が騒がしくなった。
「われ!いったい誰じゃ!」花岡興業の若い衆が、トイレあたりから飛び出してきた男に、大声で叫んだ。「せせろーしい!これが見えんのか・・・」ドスのある男声が、若い衆を黙らせた。乾いた破裂音が廊下で炸裂したのだ。
「ボス!ヤバいスッ!」会場のドアが開くと同時に、廊下で若い衆が吠えた!「ヤツはハジキを持っとる!」
和やかだった会場が、一遍に騒然となった。
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【連載小説】母娘愛 の 著者 やまのぼ 紹介👇
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