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【やまのぼエッセイ No.5】いまでも!逆上がりができない!

 私は子どものころ。鉄棒は苦手だった。特に逆上がりさかあがりができなかった。だから、年明けに後期高齢者になる今も、多分、逆上がりはできないだろう。

 それは、すでにあのころから、プライドが異常に高く、恥かくことが怖かったからだろう。

 かといって、できるまで他人目ひとめにつかないところで練習して、できるようになるまで、努力しなかったから、あのときも、今になっても逆上がりはできないのだ。

 そんなことを、思い出したのは、今朝の日本経済新聞の「春秋」を読んだからだ。

▶五感の中でも嗅覚には謎が多い。視覚や聴覚は光や音といった物理信号をとらえる。対して、嗅ぐという行為は大気中の化学物質を感知している。つまり人は揮発しない物の匂いは知ることができない。校庭の鉄棒の匂いと聞いて思い出すのは、正確には鉄棒ではなく手のひらの脂に鉄錆が溶けて混じった匂いという。

2022.11.26 日本経済新聞(朝刊)「春秋」より引用

 その鉄錆にまみれた掌に、唾をペッ!とつけては、何度も挑みながら、不発に終わった逆上がりの無様ぶざまな格好を思い出したのだ。

 ところで、その記事の本題は、最近では線虫という微生物の嗅覚感度が、医療の世界で話題になっているとか。体長がわずか1ミリ。にもかかわらず人間の3倍、犬の1.5倍もの関連遺伝子を持つらしい。
 
 その超能力を生かし病気を見つけようとするのだ。

 沈黙の臓器と言われる膵臓。進行していても発見されにくい膵臓ガンの早期発見に期待がもたれるところだ。

 発見された線虫の存在はスゴイ!と思うが、もっと、スゴイことは、その存在を見つけるまでの弛まぬたゆまぬ努力を、維持し続けた研究者の姿勢だと思う。

 恥ずかしい!と他人目ひとめを気にし過ぎ、逆上がりをモノにできなかった、あかんたれ意気地なしの私は、発見した研究者の爪の垢を煎じて、頂きたいところだ。

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