遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
相続人が複数いる、共同相続の場合の相続財産は、原則として相続人の共有になります(民法898条)。共有状態を解消するためには、遺産分割の手続をしなければなりません(民法907条)。
相続人が遺産分割前に共有持分を処分することを禁じた規定はなく、これまで、共有持分が処分された場合に、その処分された遺産についてどのように取り扱うべきか規定もなく、判例もなかったようです。
実務上、遺産分割時に存在する遺産を分けるという考え方に従って処理をされており、全員の同意がなければ処分されてしまった遺産については特段考慮することはなかったようです。
そこで、平成30年相続法改正により、この点に関する規定がおかれました。
第906条の2 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
全員の同意があれば、遺産分割前に処分された財産も遺産分割の対象とすることができ、また、処分をした相続人の同意は得る必要がない、ということになりました。