「個人情報」の違い(国・自治体・民間)
こんにちは、この記事に興味を持っていただいてありがとうございます。
最近、
https://twitter.com/nhk_news/status/1320189846162264064
というニュースがありました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、情報共有する必要性が増えたことによりクローズアップされたようですが、個人情報保護法法制が整備され始めたころには、既にこの問題を指摘されている学者の方がおられました。かなり前から学会などでご指摘・ご提言されていたのをお聞きしていたので、ようやくこれが動き出したのかという感想を持ちました。
個人情報保護法は、「個人情報取扱事業者」の義務を定めていますが、「個人情報取扱事業者」を定義している2条5項は、
この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一 国の機関
二 地方公共団体
三 独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)
四 地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)
となっており、国・自治体・独立行政法人等が「個人情報取扱事業者」から除外されています。
個人情報保護法は国・自治体・民間を横断した基本法ではありますが、取り扱いに関する規律を定めている部分(個人情報取扱事業者の義務)については、民間のみが対象となっており、国は行政機関個人情報保護法、自治体はそれぞれが定めた条例、独立行政法人等は(独立行政法人等個人情報保護法)で規律されています。
個人情報保護委員会が公開している体系イメージは こちら
それぞれの法律、条例によって、定義が違ったり、規律が異なっています。ここでは「個人情報」という定義の違いを少しだけご紹介したいと思います。
個人情報保護法2条1項
この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
行政機関個人情報保護法2条2項
独立行政法人等個人情報保護法2条2項
この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
東京都条例2条2項
この条例(次条第三項及び第八章を除く。)において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
千葉県条例2条(1)
個人情報
生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
イ 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
ロ 個人識別符号が含まれるもの
大阪府条例2条1号
個人情報 個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
ア 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第三項に規定する個人識別符号をいう。以下同じ。)を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
イ 個人識別符号が含まれるもの
違い
個人情報保護法、行政機関個人情報保護法や東京都、千葉県の条例は、生存する個人に関する情報となっていますが、大阪府の条例には「生存する」がありません。そのまま素直に読むと死者の情報も「個人情報」に含まれるます。
また、他の情報との情報について、個人情報保護法は「容易に」という文言がありますが、その他についてはありません。容易にでなくても照合できて特定個人を識別できれば「個人情報」となります。
他の規律には「個人識別符号が含まれるもの」を単体で「個人情報」としていますが、東京都の条例には「個人識別符号」がありません。
このようにパッと見ただけでも「個人情報」の定義が違っています。
民間と国、国と自治体、自治体同士などなどで情報のやり取りを行う際に規律が違うためスムーズにいかないということもありますが、民間企業が指定管理者など自治体・国の事業を行う場合、その事業については、個人情報保護法とは違う法律・条例に従わなければなりません。研修やセミナーの講師をさせていただくときも、この点に配慮した形で行っていました。
今後の議論の行方を注目していきたいと思います。