養育費が支払われない場合4(財産の所在等が分からない場合)
債務名義を取得しているにもかかわらず、相手方の財産や勤務先等がわからないと強制執行ができません。そのような場合のために、財産の所在等を取得するための財産開示手続きと第三者からの情報取得手続が用意されています。
令和2年4月1日に財産開示手続は改正され、第三者からの情報取得手続は施行されました。
財産開示手続
裁判所から相手方に対し、指定された期限までに財産目録を提出し、期日に裁判所へ出頭して財産状況を陳述するよう通知が送られます。相手方が期日に出頭した場合には、裁判所の許可を得て質問をすることが可能です。
令和2年4月1日から、対象となる債務名義の範囲が公正証書などにも拡大され、指定された期日に相手方(債務者)が正当な理由なく出頭をしなかった場合や虚偽の陳述をした場合等の刑事罰が定められました。
注意点
次のいずれかに該当することを主張、立証する必要があります。
1 申立日から6か月以内に強制執行等における配当等の手続において、完全な弁済を得られなかったこと
あるいは
2 知れている財産に対する強制執行等をしても、完全な弁済を得られないこと
東京地裁では「財産調査結果報告書」(ホームページから書式をダウンロードできます)とこれに記載されている資料の提出を求めています。
たとえば、居住地等の不動産を調査したが所有していない、あるいは、所有していても担保が設定されていて配当が見込めないことや、預貯金口座を調査したが不明、あるいは、残額では完全な弁済を得られないこと、勤務先を調査したが不明であることなどが必要です。
第三者からの情報取得手続
令和2年4月1日から施行された手続きで、裁判所を通じて金融機関、登記所、市町村、日本年金機構等から情報を提供してもらうものです。
提供される情報は、次のとおりです。
1 不動産(ただし、また開始されていません。令和3年5月16日までに開始される予定です)
2 相手方に対する給与の支給者(勤務先)(※養育費等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみ申立てができます)
3 債務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、額)
4 上場株式、国債等の銘柄や数等
不動産と勤務先に関する情報取得手続きについては、財産開示手続を実施してからでないと認められませんので注意が必要です。
具体的な書式、手続等は裁判所のホームページ等でご確認いただくか弁護士等にご相談ください。