令和2年 個人情報保護法改正について1
個人情報保護法は3年ごとに見直しをすることとされており、それを受けて令和2年6月5日に改正個人情報保護法案が可決・成立し、6月12日に公布されました。そのポイントについて何回かに分けて述べたいと思います。
1 「保有個人データ」についての短期保存データの除外規定の撤廃
「保有個人データ」とは、
個人情報保護法2条7項
個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの又は一年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの以外のものをいう。
個人情報保護法施行令5条(保有個人データから除外されるものの消去までの期間) 法第二条第七項の政令で定める期間は、六月とする。
と、6か月以内に消去するものについては、開示等請求の対象となる「保有個人データ」には含まれていませんでした。
今回の改正では、短期に消去されるデータでも漏えい等が発生すれば個人の権利利益を侵害する危険性が低いとは限らないこと、プライバシーマークにおいて審査基準の根拠とされている「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」においては、6か月以内に消去する個人情報も含め、開示等の求めに原則応じることとされていることなどから(個人情報保護法いわゆる3年ごと見直し制度改正大綱) 、「一年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの」と文言が削除され、6か月以内に消去される個人データも開示等の請求とされることになりました。
2 利用停止・消去等の請求権の要件の緩和
これまでは、利用目的による制限の規定(16条)に違反して取り扱われてるとき、または、適正な取得を定めた規定(17条)に違反して取得された場合に、利用停止・消去の請求をすることができましたが(※改正で不適正な利用の禁止(16条の2)が新設されこの規定に違反した場合もできるようになります)、これに加えて、今回の改正では、保有個人データを個人情報取扱事業者が取り扱う必要がなくなったとき、漏えい等により個人情報保護委員会に報告する事態が生じた場合その他権利又は正当な利益が害されるおそれがあるときにも利用停止・消去及び第三者提供の停止を請求することができるようになりました(改正29条5項)。
他方、要件が緩和されたことによる事業者側の負担を軽減するために、多額の費用を要する等、利用停止・消去又は第三者提供の停止を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要な代替措置を取る場合には、請求に応じなくてもよいという規定が設けられています(改正29条6項)。
3 開示方法に電磁的記録の提供が追加
これまで開示請求に応じる場合の開示方法は、改正前の法28条2項・施行令9条により、原則として書面の交付(請求した本人が同意した場合はその方法)とされていました。
いわゆるデジタル手続法が成立したことや、本人の利便性の向上を考慮して、本人が電磁的記録の提供を含めた開示方法を指示することができるようになりました(改正28条1項)。
ただし、本人が請求した方法による開示に多額の費用を要する場合その他の当該方法による開示が困難である場合については、書面の交付による方法とし、その場合には、本人に遅滞なく通知することとされています(改正28条2項・3項)。
注意(施行日)
一部を除いて、公布の日(令和2年6月12日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。
まだ施行日は決まっていませんのでご注意ください。