離婚のときに決めなければならないこと、決められること

 離婚を考えるとき、必ず決めなければならないこと、離婚届を出すときには必要ないけれども、請求するためには一定の期限が定められているもの、などがあります。その点の整理をしたいと思います。

1 必ず決めなければならないもの~親権

 「親権」とは、簡単にいうと、未成年の子供のために監護・教育を行ったり子の財産を管理したりする権限であり義務です(ごくまれに親権から監護権のみを分離することもあります)。
 夫婦の間に未成年のお子さんがいる場合には、親権者を定め(民法819条)、離婚届に親権者を書かなければなりません(戸籍法76条・77条2項)。

2 名字(氏)

 婚姻の際に、相手方の名字(氏)を名乗ることになった方は、離婚により、当然に婚姻前の氏に戻ることになります(民法767条、771条)。
 婚姻時の名字(氏)を名乗りたい場合には、離婚の日から3か月以内に別途届出をする必要があります(民法767条2項、法77条の2)。
 3か月を超えてしまうと、家庭裁判所に氏の変更許可の審判を申し立てなければなりません。

 この名字(氏)に関しては、よく相談でも聞かれ、子供の場合と異なるので注意しなければならない点です。

2-2 子供の名字(氏)

 婚姻前の名字(氏)に戻る人が未成年者の子の親権者となった場合でも、子供は親権者の婚姻前の名字(氏)に当然に変更されるわけではなく、婚姻時の名字(氏)のままになります。親権者に指定されることによって、当然に子供の戸籍も親権者のところに入るわけではありません。

 婚姻前の氏に戻る親権者が子と同じ氏を名乗るためには、家庭裁判所に対し、子の氏の変更許可の申立て(民法791条)をするか、上記2の親権者が婚姻時の氏を名乗る届出をすること(ただし、子供の戸籍はそのままなので、子供の戸籍を移動させたい場合は、子の氏の変更許可を申し立てなければなりません)が必要です。

3 もとの戸籍に戻るか、新しい戸籍の筆頭者になるか。

 離婚により、配偶者の戸籍に入籍した人(姓(氏))が変わった人は、元の戸籍(親の戸籍に戻る、あるいは、それ以後に分籍などしていた場合にはそちらの戸籍)に戻りますが、新しく戸籍を作ることを申し出ることもできます(戸籍法19条)。

 元の戸籍に戻ってから、改めて分籍などの手続をすることは特に期間制限などはありません。

4 財産分与

 離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。離婚時に決める必要はないですが、離婚の際に取り決める、結論を出して例も多くあると思われます。
 離婚のときから2年が経過すると、家庭裁判所に申立てができなくなります。

5 養育費

 養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。
 離婚したとしても、子供の親であることは変わりなく、親権者じゃなかったとしても、扶養義務(民法877条)を負っています。
 財産分与同様、離婚時に決める必要はないですが、離婚の際に取り決めている、結論を出している例も多くあると思います。
 また、協議で定められない場合には、家庭裁判所で調停・審判をして決められます(民法766条)。

 養育費の額について参考となる資料を裁判所が公開しています。

6 面会交流

 子どもと離れて暮らしている父母の一方が子どもと会ったり、電話をしたり、手紙などの方法で交流することです。子供の健全な育成のためのものと考えられており、子供の年齢や性別、性格、生活環境等様々な事情を考慮して決めていきます。
 協議をして決められない場合には、家庭裁判所で調停・審判により決められます(民法766条)。

7 年金分割

 二人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。

 離婚から2年以内に手続きあるいは審判又は調停をする必要があります。

8 祭祀承継者

 婚姻によって氏を改めた人が、祭祀を執り行う権利を承継していた場合には、その権利を承継する人を定めなければなりません。協議で定められない場合には家庭裁判所で定めることになります(民法769条)。
 このケースを私は一度も見たことはありませんが。

9 終わりに

 理想は、離婚届を出す段階ですべて協議ができ、定められていることです。離婚の条件闘争にもなることが多いです。
 離婚届だけ先に出した場合、期間制限の問題に注意しなければなりません。
 様々な問題がありますので、離婚をお考えになった際には、一度専門家にご相談されて、問題点を整理されることをお勧めします。

 参考 法務省 離婚を考えている方へ~離婚をするときに考えておくべきこと~
 

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