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剛心 文庫 1015

「剛心」の文庫が今月18日に発売になります(集英社文庫)。
装丁は川名潤さん。担当編集は金髪もまぶしい頼れる男H氏。解説は元国土交通省営繕部長の秋月聡二郎氏です。
営繕部は、この小説の主人公・妻木頼黄の所属していた大蔵省臨時建築部が120年の時を経て至った組織になります。秋月さんは現在と妻木の時代の建築物へのスタンスの違いや、妻木「先輩」への思いを綴ってくださりました。素晴らしい内容で、私自身大変勉強になりました。
今回、妻木を描くにあたり、実は国土交通省への取材は行いませんでした。実在の人物を小説に描く場合、かなり幅広く取材もし資料にもあたるのですが、取材の場合は殊に距離感に留意していたりします。客観的によい部分も悪い部分も描けるような位置にいるためでもあります。この小説は特に、妻木が主人公でありながら、妻木視点が一切ないという特異な形で書いているので、いっそう気を配りました。反面、技術面についてはしっかり書き込もうと。この辺りの話は長くなるのでこのくらいで(11月の近代文学館でのトークショーではもしかしたらそんな話をするかもしれません)。
そんなわけで、国土交通省に取材協力をあおぐことはなかったのですが、発行後に営繕部の方が見つけてくださり、それが今年の夏まで営繕部長を務めておられた秋月さんにわたり、お手紙をいただき、編集さんと一緒に営繕部にお招きいただきました。そのあたりの経緯も、解説には書かれています。とても温かく迎えてくださり、いろんな話を聞かせていただき、貴重な時間を過ごすことができました。
小説を書いていて、たとえば多くの方に読んでいただくのはもちろん大きな喜びなのですが、題材にとった現場の方、その職種の方、それに関わっていた方、その時代を体験した方などに、嘘がない(という言い方はざっくりしてますが)と感じていただけることほど嬉しいことはありません。まだまだ未熟ではありますが、秋月さんの解説を拝読しながら、流されずごまかさず地道にちゃんと仕事をしようと改めて襟を正しました(青臭いですが)。

ちくま文庫から細谷正充さんセレクトのアンソロジー「大江戸綺譚」に「お柄杓」を入れていただいています。こちらも是非!きれいな装丁です。

過日、通崎睦美さんのサントリーホールのコンサートへ。本当に素晴らしかったです。その後の打ち上げでは楽しい人々といろんな話を。今年は京都と東京で2度も演奏を聴けました。



今年も柿が豊作でした

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