見えない貧困
先日読んだ本『高校生ワーキングプア 見えない貧困の真実』。
これは、NHK取材班が、働きながら家計を支える高校生を取材した記録のルポタージュ。ぱっと見きれいな服を着て身なりも綺麗で、スマホも持っていているので「貧しくないじゃないか」と言われそうな子供たちが、実はアルバイトを2つ掛け持ちしていたり、親の介助をしながら兄弟の世話、家事をこなし1日4時間しか寝ていなかったり。そうした、外からじゃわかりにくい「高校生ワーキングプア」。
児童相談所に保護されるような目に見えたものではなく、貧困を外から見えにくい貧困も存在する。
学生という身でありながら、ワーママ以上のタイムスケジュールで生きてる子もいて、驚愕の内容だった。
ある女の子は、朝5時に起き、洗濯等家事をこなし、弟妹の朝食をつくり学校へ送り出し、学校へ行く。終わったら、夕飯を作り、妹弟へ食べさせ、その後夜飲食店等でバイトをする。帰宅は11時過ぎ。そこから宿題や家事をやり、1時就寝。自分のテスト勉強、受験勉強等は空き時間にやるしかなくて、友達と遊ぶ時間なんかない。
親の病気、不就労等はあるが、あまりに背負うものが多すぎはしないだろうか。
高校生になると自力で働けてしまう分、親のために、親に代わり、自分の時間を削って働かないとならない子がいる。「がんばらなくても生活保護があるじゃないか」という方もいるかもしれない。でも、生活保護は世帯主である親が、受給を申請する意思がないともらうことができない。そのため、それを頑なに拒否する親の子供は、「働く」という選択肢以外で生活を支える術がない。
親が半分生活を諦めてしまっている例は、第三者が保護しやすい。一方で、みなりを綺麗に外に出ていると、実態が貧困でも外からは見えにくい。日本では「社会」「世間体」という見えない大きな力が働くため、そうした貧しい暮らしを隠したがる親もいる。思春期の子からしても、いじめの原因となるのでそうしたものは隠したい。そうすると、どんどん周りからそれが見えにくくなり、支援を受けるのも難しくなる。
生活保護を受けなくても、生活保護受給レベルで暮らす家族。そのしわ寄せは、無力な子どもたちへ押し寄せ、働ける高校生が稼ぎ頭として家計を支える現実。
こどもとしての権利、こどもらしい時間を過ごす権利って何だろう。
目に見えるものが全てではない。そんなことを考えるきっかけとして、現実を知る上で、ぜひ読んでもらいたい1冊。