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無痛分娩をする?パパの役割を考える
パパや周囲の家族から見た無痛分娩
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「無痛分娩って怖いニュース聞いたことあるしやめときな。」
「痛みを乗り越えてこそ立派なお産。無痛分娩なんてだめ!」
無痛分娩に興味があっても、周りの反対があってなかなか決断できない妊婦さんが多いのも現状です。
実際に日本の無痛分娩の割合は増えているとはいえ、やっと10%を超えたところです。
諸外国には無痛分娩の割合が70-80%と無痛分娩が当たり前となっている国もあり、日本はまだまだ低いのが現状です。
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無痛分娩について正しく理解し、無痛分娩をするかどうかを考えて欲しいと思います。
そして、無痛分娩をするかどうかの選択をするにあたり、パパの役割を考えていきましょう。
無痛分娩は立派なバースプラン
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バースプランという言葉をご存知でしょうか?
簡単に言うと「こんな出産にしたい!」と言う希望です。
例えば、
・リラックスするために自分の好きな音楽をかけながらお産をしたい
・赤ちゃんが産まれたら写真をたくさん撮って欲しい
・旦那さんには是非立ち会ってほしい
などなど。
当たり前ですが、バースプランは出産をする当本人の希望が最優先されるため、周りがどうこう言うものではありません。
もちろん医療従事者もここは口出ししません。
助産師が中心となり、妊婦さんの希望を聞いてお産前にバースプランを書いてもらう病院も多いです。
ではバースプランにおける無痛分娩の立ち位置はどうでしょうか?
痛みをなるべく取ってお産をしたい。
立派なバースプランです。
つまり、痛みを感じてこそ立派なお産だよ等と口出すことは本当に余計なお世話です。
音楽の趣味を否定して、こっちの音楽を聴きながらお産しなさいと言っているようなものです。
ここでバースプランと産後うつの関係についてもお話ししたいです。
実はバースプランが達成できなかったことと、産後うつの関連を示した報告もあるんです。
本当は無痛分娩したかったけど周りの反対からできなかった。
そんな気持ちが産後うつに発展してしまうかもしれないんです。
また無痛分娩を選択したけど周りの反対があった場合には、痛みから逃げてしまったと言う罪悪感を妊婦さんが持ってしまうかもしれません。
つまり、黙って希望を聞いてあげる!
それが旦那さん含め周囲の人の役割といえます。
そうは言っても、無痛分娩で怖いニュースを聞いたりすると口出ししたくなる気持ちもわかります。
ここでは、無痛分娩のメリットとデメリットについて説明していきます。
無痛分娩のメリット
① 痛みや恐怖心、産後の疲労の軽減
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これが無痛分娩も最も大きなメリットといえます。
お産について恐怖心を持っている妊婦さんが非常に多く、その理由はやはり痛みに対する恐怖心です。
「生涯経験する中で最も強い痛みだよ」と言われたら怖がらない方がおかしいです。
その痛みが軽減されると考えると、お産に対する恐怖心も減り、お産に前向きに臨めると思います。
無痛分娩のメリットは産後にも続きます。
お産が終わった後は通常おしもに傷ができてしまうことが多く、傷の縫合処置が必要になります。
無痛が入っていると、縫合処置に痛みを感じないことがほとんどで、非常に楽です。
またお産の疲労感も軽減されるため、産後の回復が早い方が多いです。
② お産の前に重大な問題がないか気が付ける
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無痛分娩は背中に針を刺し、そこからチューブを背中に通して薬を使います。
例えば、血液を固める機能に異常があった場合には、針を刺すことで血が止まらず重大な合併症が発生してしまうかもしれません。
そのため、無痛分娩を希望した妊婦さんは、血液検査や必要に応じてレントゲンなどの検査を行います。
この検査は通常予定日の2ヶ月前くらいに行うことが多く、お産前に重大な問題がないか気がつくことができます。
③ 帝王切開へのスムーズな移行
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下からのお産を目指していても、お産は何があるかわかりません。
赤ちゃんの心拍に異常がでたり、お母さんの血圧が上がったりなどなど帝王切開が必要になる場面が起こりえます。
帝王切開は手術であるため、当たり前ですが麻酔が必要です。
無痛分娩の効きにもよりますが、無痛分娩中の方は無痛分娩に使っているチューブをそのまま帝王切開でも使えることがあります。
本当に緊急な帝王切開でも、麻酔の導入にはある程度の時間が必要であるため、無痛分娩をしていれば帝王切開への移行がスムーズになる場合があります。
無痛分娩のデメリット
① 麻酔薬そのものにおける副作用や合併症
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•頻度は非常に低いけど起こると怖い合併症
① 全脊髄くも膜下麻酔
無痛分娩をしてお母さんが亡くなってしまったというニュースを聞いたことがあるかもしれませんが、この合併症です。
麻酔は部分的に痛みを取るために行われますが、チューブが奥に入りすぎたり、薬の投与量を誤ってしまい、脊髄全体が麻痺してしまうことがあります。
脊髄全体が麻痺してしまうと呼吸ができなくなったり、血圧が下がったりなど命に関わることがあります。
通常は少量の薬を投与して、お母さんに異変が起きないかのテストをしてから無痛分娩を始めるため、大事に至らないことがほとんどです。
② 局所麻酔中毒
薬が背中の神経ではなく血管の中に入ってしまい起こる合併症です。
痛みが取れないばかりか、痙攣や意識消失などの症状が起こることがあり、速やかに痙攣を抑える薬などの投与が必要になります。
•頻度がある程度多い合併症
③ 痺れ
背中の神経のあたりをチューブで触るため、一時的に片足だけが痺れたような症状が出ることがあります。
正座した後のようなジーンとした感じが続きますが、産後しばらくすれば無くなることがほとんどです。
④ 頭痛
背中のチューブを刺すときに髄液という背中の液体が外に多く漏れ出てしまうことがあります。
背中の髄液は頭の中にある髄液と交通しているため、頭の圧が変動することで産後に頭痛が起きてしまうことがあります。
産後数日で良くなることがほとんどですが、背中の穴を閉じる処置が必要になることもあります。
その他にも、かゆみやお熱が出ることが多々あります。
② 麻酔薬のお産への影響
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無痛のお薬や痛みを和らげるだけでなく、陣痛を弱くしてしまう副作用があります。
陣痛が弱くなるとお産の進みが悪くなってしまうので、陣痛をお手伝いする促進剤が必要になったり、最後に吸引分娩や鉗子分娩といったお手伝いのお産が増えます。
帝王切開については頻度が変わらないとする報告が多いです。
以上に挙げたような無痛分娩のメリット、デメリットを理解した上で、無痛分娩をするかどうかの選択をして欲しいと思います。
そして何より無痛分娩は立派なバースプラスであることを旦那さん、ひいては周りの家族が理解してあげてほしいと思います。
まとめ
① 無痛分娩は立派なバースプランです。周囲の人はその意見を尊重してほしいです。
② 無痛分娩のメリットとして、お産への恐怖や痛みが減ること、お産前に重大な問題がないか気がつけること、帝王切開への移行がスムーズなこと等が挙げられます。
③ 無痛分娩のデメリットとして、頻度が低いですが重篤な合併症(全脊髄麻酔、局所麻酔中毒)、頻度がある程度多い合併症(痺れ、頭痛、かゆみ、熱)等が挙げられます。
④ 無痛分娩がお産へ与える影響として、陣痛が弱くなるため促進剤やお手伝いのお産が増えることがあります。
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