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パパも知るべき切迫流早産。突然そして長期の入院。


(夫) え!?今日から入院?? 今朝なんともなかったのにいきなりすぎない??
→切迫流早産では無症状であっても、妊婦健診きっかけで突然入院になる場合があります。

(夫)  入院してもう2週間も経つけど。まだ入院するの?
→切迫流早産では時に長期の入院が必要になります。場合によっては数ヶ月入院することもあります。

(夫) こんな早い週数で手術?? 帝王切開以外に手術することあるんですね。
→切迫流早産では手術が必要になる場合があります。特に前回のお産で早産になった人は手術になりやすいです。

(夫) 面会に行ったら奥さんが辛そうなんですけど、大丈夫なんですかね?
→切迫流早産で使う薬は、お母さんにとって色々な副作用が出てきます


突然、しかも長い間奥さんが入院してしまうかもしれない切迫流早産について、パパも知る必要があります。
切迫流早産について知ることで、家事スキルを磨いたり入院セットを準備したりなど、急な入院に備えることができます。

また帝王切開以外産科の手術はあまり知られていませんが、切迫流早産では「頸管縫縮術」という手術が必要になる場合があります。
特に前回のお産で早く産まれてしまった人は手術になる可能性が高くなり、頭に入れておく必要があるでしょう。

頻繁に使用する切迫流早産の薬の副作用についても知り、奥さんに共感できるようになれば言うこと無しです!



切迫流早産とは?

文字通り流産や早産が切迫している(差し迫っている)状態です。

流産とは妊娠22週未満に産まれてしまうこと。
残念ながら現代の医療では赤ちゃんを救うことが出来ない週数です。

早産とは妊娠22週以降、37週(予定日の3週前)未満に産まれてしまうこと。
週数に幅がありますが、特に28週未満を超早産と言って色々な合併症が心配になる週数です。
産まれてきた赤ちゃんが生死に関わることもあります。
それだけでなく目が見えない耳が聞こえない、頻回の病院通いが必要、家でも酸素投与が必要、発達障害などなど色々な問題が出てくる可能性がある週数です。

早産の合併症の詳細については、パパが禁煙するべき理由の記事でまとめているので、読んでもらえれば幸いです。


早く産まれてしまうと赤ちゃんにとって色々不都合。
出来るだけ赤ちゃんにはお腹の中にいてほしい。
産科医にとっても新生児科医にとってもお母さんにとっても流産、早産は絶対に避けたいんです。

流産、早産が迫ってます!危ないですよ!という黄色信号が切迫流早産なんです。



なぜ「突然」入院になるのか?

先程、切迫流早産は黄色信号と言いましたが、妊婦健診でいきなり黄色信号が見つかることがあるのです。
具体的には頸管長といって子宮の出口の長さが短くなっている、子宮の出口が開いてきているというのが黄色信号です。

一般的に妊娠20週前後で頸管長を測ることが多く、何も症状が無くても頸管長が短い為に入院になる場合があります。

もちろん入院になる場合は、頸管長が短いだけではありません。
痛みを伴う頻回のお腹の張り、出血、破水感なども黄色信号です。

これらの症状があり病院を受診して、そのまま入院になるケースも多いです。
特に症状がある場合には、速やかに治療が必要になる場合も多く、原則一旦家に帰ることは出来ません。
しかし、一回帰って入院の準備をしたいという妊婦さんが非常多いです。
いつでも入院できるよう日頃から入院セットの準備をしておく必要があります。
入院セットの場所の把握など、夫婦でしっかり共有したいですね。



なぜ「長期」入院になるのか?

子宮の出口が短いなどの黄色信号で入院になった人は、その後出口がどう変化していくのかを慎重に観察する必要があります。
例えば頸管長がどんどん短くなってきたり、出口が開いてきたりしてしまったら、病状が進行していることになるので、退院は難しくなります。

また切迫流早産で使用するお腹の張りを抑える薬は、通常点滴で使います。
つまり、お薬出すので家で様子見てくださいねという訳にはいきません。
(実際のところ飲み薬もあって、出しているクリニックもあるのですが、副作用だけ増えて効果はないと言われてます)

点滴治療が始まると辞め時が難しくなります。
特にお腹の張りが収まらず薬の量をどんどん増やした場合、お腹の張りが落ち着いた後も薬の量を減らしていくのは慎重になる必要があります。
そのため入院が長期化しやすいです。

また、より早い週数で入院になった場合には入院が長期化しやすく、週数によっては産まれてしまった場合に対応できない施設も多く、大きな病院に搬送となってしまう場合があります。




切迫流早産で手術になる場合って?

頸管縫縮術という手術があります。
子宮の出口を糸でしばることで、出口が開かないようにする手術です。

これにはリスクが高い人(子宮の出口が開きやすい人)に予め行う予防的な手術と、既に出口が開いてしまった人に行う治療的な手術があります。

では出口が開きやすい人(頸管無力症という)とはどんな人でしょうか?
それは前のお産の経過が非常に重要になります。
前のお産で、全然お腹が張ってないのに突然早産になってしまった、破水してしまったという人は頸管無力症の可能性があります。

通常前のお産が終わった後に、「次の妊娠では予防的な手術が必要ですよ」と医師から説明を受けますが、同じ場所で産むとも限らないので、ご自身で医師から言われたことを覚えておく必要があります。
そして予防的な手術は、通常妊娠12週頃と早い週数で行うので、妊娠がわかったら早めに医療機関を受診するようにしてください。


続いて治療的な手術が必要になる人はどんな人でしょうか?
健診等でたまたま見つかるケースが多いのですが、無症状で子宮の出口が開いてしまっている人です。
無症状というのがポイントで、お腹がすごい張っている状況では手術を行うことができません。
だいたい妊娠26週くらいまでが、治療的な手術の対象になります。


また切迫流早産の原因の一つにばい菌の感染があります。
菌が感染することでお腹が張り、流早産になってしまう場合があるのです。糸でしばるということは、お母さんにとっては異物が子宮の出口に置かれることになるので、ばい菌がより繁殖しやすく、切迫流早産の治療として逆効果になってしまう場合があります。
そのため、血液検査などで感染の可能性が低いことを確認することが重要です。


まとめると、前回のお産の経過によっては妊娠12週という早い週数での手術になる可能性があります。
どんな方でも、妊娠26週くらいまでは健診きっかけで急に手術が決まる可能性があります。




知っておきたい切迫流早産の薬の副作用

切迫流早産の主な治療薬として、お腹の張り止めとステロイドの薬があります。

お腹の張り止めについては、日本では主に2種類の薬が使われることが多いです。
副作用については、血液検査の異常など挙げ出すと多くのことがあるのですが、ここでは頻度が多いものを説明します。

•お腹の張り止め
① 塩酸リトドリン
子宮の筋肉が収縮するのを抑える薬です。
実はお薬が心臓にも働きかけてしまって、ドキドキする(動悸)症状がかなりの頻度で起こります。
また手の震えや、点滴をしている所の痛み(血管炎)なども頻度が多い副作用です。
リトドリンは日本で最も使われている張り止めなので、副作用については把握しておきましおう。


② 硫酸マグネシウム
子宮の筋肉が収縮しないように、筋肉をだるーんとさせる(弛緩させる)薬ですが、色々な筋肉にも同様の作用が起きて、全身の筋肉がだるくなり痛みが出たり、瞼が重く落ちてきたりします。
マグネシウムというのは、体の中で過剰になり過ぎると命に関わる不整脈が出たりするので、頻回に血液検査をしてマグネシウムの濃度を確認することが必要になってきます。


•ステロイドの筋肉注射
ステロイドという薬は種類によるのですが、胎盤を通過して赤ちゃんに働きかけます。
お母さんにステロイドの筋肉注射を打つことで、胎盤を通過し赤ちゃんの肺の成熟を促してくれたり、早産で起こりうる色々な合併症を減らしてくれたりなどの効果が期待できます。
通常早産になりそうな妊婦さんに対して、早産が予想される7日以内に合計2回注射します。
しかしお母さんにとっては、血糖値を急上昇させてしまったり、目が覚める効果もあるので、治療薬を夜に始めたりすると、寝れなくなってしまったりなどの副作用があります。




切迫流早産治療は変わりつつある!?

長期から短期の薬剤投与へ
お母さんにとっては朗報?かもしれませんが、張り止めの点滴治療を出来るだけ短くという流れに変わりつつあります。

張り止めの点滴を長々使っても、本当に必要な時だけ例えば数日だけ使った場合で、早産率が変わらないという研究データが多くあり、海外に習って日本の治療も変わりつつあります。
副作用が心配な薬の投与期間を出来るだけ短くすることは、お母さんにとっては良いことですね。


② ステロイドの注射は本当に必要な時に
ステロイドの筋肉注射を妊娠中に打っておけば、早産で産まれてしまった場合に色々な合併症を減らせるとお話しました。

しかし近年、ステロイドの筋肉注射を打って早産にならず、結果的に満期で産まれた赤ちゃんの発達に問題が生じたり、行動障害が増えたりなどデメリットの面が注目されてきています。

とにかく心配だからステロイドの注射を打っておきましょうという流れから、本当に必要な人だけ(本当に早産しそうな人だけ)に投与する流れに変わって来ています。



まとめ

①  切迫流早産とは、流産(22週未満で産まれてしまうこと)、早産(37週未満で産まれてしまうこと)が差し迫っている黄色信号です。

②  黄色信号には痛みを伴う頻回のお腹の張りや出血、破水感などの症状を伴うものだけでなく、子宮の出口の長さが短いことや出口が開いてきているなど、症状がない場合もあります。

③  健診きっかけで突然入院が決まったり、点滴の治療が始まって入院が長期化することもあります。

④ 頸管縫縮術は、誰でも手術の対象になる可能性がありますが、特に前回のお産の経過が重要であるため把握しておきましょう。

⑤  切迫流早産で使用する頻度が高い張り止め2種類とステロイドの筋肉注射については副作用についても把握しておきましょう。

2024/9/10時点のエビデンスを元に作成しています。

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