『ラーメンとの戦いは3分間🍥🍜』_笑えない未来の奇瓢集
近未来の世界。
食事は全て栄養バランスの整ったカプセル。それを一日一粒飲むだけだった。料理はもはや博物館で展示されるアートで、実際に火を使った調理をすることなど夢のまた夢。そんな中、10歳の少年リクトは学校の夏休みの宿題である「昔の食べ物」に非常に興味を持ち、家に帰るなり両親に聞いた。
「ねえ、カップラーメンを食べてみたい!」
両親は顔を見合わせた。カップラーメンとは、100年前に一世を風靡した即席食品のことだと古書で読んだ記憶がある。だが、保存禁止になった食品を食べるなど、今や禁忌だ。
それでも、父親は密かに研究所で働く同僚から古いカップラーメンを入手した。息子の好奇心を満たしてあげたい一心だった。
その晩、家族全員が集まり、リクトの目の前でカップラーメンの封を開けた。中から出てきたのは、縮れた麺と粉末スープ。
作り方は「お湯を注いで3分待つ」という単純なものだった。しかし古代技術を模倣するのは容易ではない。未来のお湯は超高密度ナノ液体、何でも分解してしまう危険性があったのだ。
「とりあえず、注いでみるか」
父がお湯を注ぐと、カップの中で異常な反応が起こり始めた。麺はみるみる膨張し、蓋を突き破って天井に到達!スープは謎の青白い光を放ち、部屋の空間に異次元的な渦を生み出した。
「これ、食べ物じゃなくて兵器じゃないか !?」
渦の中から突如、巨大な麺の触手が出現。部屋中を暴れ回り、家具を次々に飲み込んでいく。リクトは大興奮で叫んだ。
「これがカップラーメンの本当の力か!最高すぎる!」
だが次の瞬間、麺の触手はリクトをつかみ上げると、彼をくるくると巻き始めた。
「ちょ、待って!僕が食べられる側なの?!」
悲鳴を上げるリクトを横目に、父はデータベースで「現代における古代カップラーメンの対処法」を必死に検索。そして画面に出た答えは⋯⋯。
「卵を入れると落ち着きます」
「ええっ!?」
父は半信半疑で卵を投げつけた。すると、触手がぴたりと動きを止め、巨大な麺の塊が静かにラーメンの形状に戻った。恐る恐るスープを一口すすった父が呟いた。
「⋯⋯旨い!!」
家族全員で食べ終わった後、カップラーメンの底にメッセージが書いてあった。
「お召し上がりの際は、地球の法律に基づいてください」
めでたしめでたし。(なのか?)