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君は日本一の初日の出スポット「日出の石門」を知らない 

 2025年1月1日午前5時、暗く寒い早朝に私は自宅からホンダのコンパクトカーに乗り込んだ。エアコンが車内を温めるのを感じながら友人宅へ向かう。今日の目的は愛知県田原市にある日の出スポット、「日出の石門」で2025年の初日の出を拝むことだ。
 友人宅は自宅の近くで車なら5分とかからないはずの距離だった。しかし、友人宅へ行くことが実に数年ぶりだったことと外が暗かったことも相まって道のりを完全に失念してしまっていた。友人宅があると思われる地区をしばらくウロウロした後、諦めて友人に電話して住所を聞きたどり着くことができた。これにより15分程度の遅れを生じ、日の出に間に合わない可能性の懸念材料となった。
 友人宅へ着いたとき、友人は門の前で寒い中待っていた。私は遅れたことを詫びながら彼を車の助手席に座らせた。車内には微糖と無糖の熱い缶コーヒーが用意してある。どちらかを友人に渡し、残った方は自分で飲むためだ。彼にどちらがいいか訊くと、無糖がいいと答えた。私が無糖の缶コーヒーを渡そうとすると、友人はお前も無糖が好きだろと言って微糖の方を取っていった。彼の好みを把握しておかなかったことを少し後悔した。
 友人を乗せた車を走らせ、私たちは岩門へと向かう。私は自動車の運転免許を取得したばかりだったので、助手席に座った彼からあれこれ指示されながら走った。暗い中での運転には多少不安があったのでこれは助かった。彼は高校在学中に運転免許を取得していたので、既にゴールド免許の優良ドライバーだ。
 道中の車内で私たちは会わなかった一年の間にあったことを互いに話した。仕事のこと、大学のこと、趣味のことなど話題の種は尽きなかった。大きく異なる境遇にいるだけあって、話を聞くと様々な新鮮な情報に触れられるのが楽しかった。
 日出の石門は半島の先端あたりにある。愛知県から太平洋に張り出た渥美半島の海岸沿いの国道をひた走れば着くので迷うことはない。日出の時間に余裕を持って到着できそうだったので、コンビニに寄り道することにした。入口付近に設置された灰皿の前で私たちはタバコを吸った。私はかなり昔にタバコはやめていたが、たまに吸うくらいなら問題ないと思って友人からセブンスターを一本いただいた。久しぶりに吸い込む煙は強烈で、少し頭がくらつく気がした。私が一本を吸う間に、友人は二本を灰にした。
 タバコを吸い終えるとすぐに出発し、しばらくして目的地付近の駐車場に着いた。駐車場は同じく初日の出を拝みに来た車で混雑しており、停められる場所が無かった。仕方なく駐車場を外れ、隣の農道に無断で駐車した。
 そこから徒歩はで防風林を抜けて海岸に出ると多くの人が砂浜の上で日の出を待っていた。日出の岩門がある場所まではまだ距離があったので、海岸沿いのサイクリングロードを歩いて向かった。空はすでに明るく、空気も大して寒くなかった。
 日出の石門に着くと、周辺はひときわ多くの人が集まっていた。皆が東の方を見つめている。東の水平線に雲は見当たらず、太陽を遮るものは無い。数年ぶりに理想的な初日の出を見られる好条件だ。
 6時59分、2025年最初の夜明けが訪れた。眩しい光が東の果てから姿を現すのを見届け、この光景を友人と見られたことを嬉しく思った。

海岸から見る初日の出

 初日の出を見た後は帰路に着き、渋滞に巻き込まれながら渥美半島を走り抜けた。途中でマクドナルドに寄り、エッグマフィンを食べながら他愛のない話をした。私が車を出したからと言って、食事代は友人が支払ってくれた。
その後は彼を家まで送り、良いお年をと言って別れた。これからも互いに別の道を生きていくことになるだろうが、こうして年に一度くらいは会えるようにしたいものだ。


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