水彩で綴る 「夕凪」
「夕凪」
「夕凪」
熱い空気の膜が張り付いてるみたいで
息ができない。
振り払おうと夢中で海岸まで走る。
強く吹く風に救けをもとめたはずなのに、
低い雲は形を変えずに知らん顔。
夕焼けが少し始まって
陸の風と海の風が、お互いに黙り込んで
しまう時。
蝉の声が背中の向こうでかすかにうねる。
海はただ鈍色に
じっと時が過ぎるのを待つ。
立ち止まって、ゆっくりと息を吐く。
空と海の間が薄紫色に滲んでいる辺りに
もう何かの灯りがひとつふたつ。
小さな真珠の粒の淡い光を
手にかざして、そっとのせてみる。