読書と〇〇をかんがえる

TVディレクター→おもちゃ作り→創業→会社員 などいろいろ経験してきた 双極性Ⅱ型当事…

読書と〇〇をかんがえる

TVディレクター→おもちゃ作り→創業→会社員 などいろいろ経験してきた 双極性Ⅱ型当事者の 読書愛好家。 千葉ロッテマリーンズをこよなく愛するいち市民

最近の記事

原田マハ「風神雷神」と「光る君へ」

今期の大河ドラマ「光る君へ」がとても面白い。大河ドラマとしては「鎌倉殿の13人」が本当に面白くて、暫くこれを越えるものはないと思っていたけど、違うアプローチで割とすぐに面白い大河が来た。 正直、最初は歴史ものとして疑問に感じる点が多くて全然ピンと来なかった。まひろ(紫式部)の母親が藤原道兼に切られる、なんてフィクションにも程があると思って拒絶感があった。 ただ、道長とまひろが成人したあたりから途中から加速度的に面白くなった。どういう作品なのか我々の側が自然と理解することで面

    • 東野圭吾「クスノキの番人」と祖父の思い出

      僕は子供の頃、おじいちゃんっ子だった。 途中で数年父親の単身赴任に伴い関西に住んでいたこともあったが、大学まで横浜で母方の祖父母と共に3世帯で住んでいた。 唯一の男孫だったこともあり、母方の祖父は本当に僕を可愛がってくれ、そしてよく遊んでくれた。 今思うと、元々祖父自体が子供が好きで、Nゲージやプラモデルなどのおもちゃの類が好きだったということ、そして(今の僕もそうだが)あまり社交的でなく、家族と時間を過ごすこど好きだったということもあったと思う。 とにかく、祖父には本当によ

      • 大崎善生「聖の青春」とメメントモリ

        今日は1年ぶりに甲状腺癌の経過観察検査があった。前回までは半年ごとで、今回から一年に一回となった。それだけ経過が良好ということなのだろうけど、期間が空いたら空いたで不安は募る。 癌が見つかったのは2021年の夏、コロナが再度流行り出していた頃で、病棟を封鎖するかどうかという感じの局面だったし、面会はかなり制限されていた。ほぼ時を同じくして大阪に住む姉が高齢出産(しかも初産)で臨月を迎えていて、両親からしたら息子と娘が同時に入院ということで気が気でなかっただろうと思う。1人は

        • 山際淳司「背番号94」と同人誌の思い出

          子供の頃は小説家になるのが夢だった。子供の頃といっても高校くらいまでは思っていたから、結構本気だったのかもしれない。 当時通っていた高校には、学内に文芸の授業のようなものがあって、そこで学校文芸同人誌のようなものを作っていた。僕はそこに毎回のように何かを書いて出していたし、その幾つかはその号の先頭に並べてもらって、後から編集している先生に「その時好きだった作品を先頭に置いているんだ」と教えてもらって喜ぶなどしていた。 それでなくてもちょっとした作文コンクールのようなもので

        原田マハ「風神雷神」と「光る君へ」

          鈴木祐「最高の体調」と部門間のコンフリクト

          「営業が無茶な案件をどんどんとってきて、製造現場が困る」「量産工程が納期に間に合わせるのに必死なのに、品質管理が通さない」「とにかく急いで商談をまとめたいのに、法務がうるさくて契約がまとまらない」 どんな職場でもこんな事は起きているのではないかと思う。 僕はいま40代だけど、30代はとくにこうしたコンフリクトに直面することが多かった気がする。その度に、キリキリと胃を痛めていたように思う。 最近、少しブームに送れて「最高の体調」を読んだ。この本はたくさんの方が要約動画を出し

          鈴木祐「最高の体調」と部門間のコンフリクト

          ビジネスパーソンとハンナ・アーレント

          ビジネスパーソンという言葉を聞くと、ムズムズする。 ムズムズするたびに、ああ、これは自分の中のねじけた部分だなと思う。 ただ、なんとなく居心地が悪いような気持になってしまうのだ。 一般的にビジネスパーソンという言葉はどのような意味で使われているのだろう。「スチュワーデス」が「キャビンアテンダント」に置き換わったように、「看護婦」が「看護師」に置き換わったように、性差を考えて「ビジネスマン」を「ビジネスパーソン」と呼ぶようになった…ただそれだけのことなのだろうか。 僕はど

          ビジネスパーソンとハンナ・アーレント

          映画「ルックバック」と村上春樹「1973年のピンボール」

          僕の観測範囲であまりにも評判が良かったので、映画「ルックバック」を見てきた。僕はあまり映画を見る方ではないので大したことは言えないけれど、ただただ本当に良かった。58分という短い尺であることもあっていま時点では公開している映画館が少ないけど、これからもっと増えると思う。 見終わったあと、一緒に見ていた妻が「こういう漫画を描ける人が週刊誌連載で魂を削られているのはもったいない」と言った。ちなみに妻はチェーンソーマンは読んでいない(僕は読んでいる)。ルックバックの原作は2人とも

          映画「ルックバック」と村上春樹「1973年のピンボール」

          「ストーリーが世界を滅ぼす」と古池に飛び込む蛙

          「古池や 蛙飛び込む 水の音」 松尾芭蕉の有名な俳句について、「この蛙は一匹か、複数か」という論争があるらしい。 僕は完全に一匹だと思っていたし、古池の静寂の中にぽとんと一度音がなることで寂寥感がましていく、風情を考えればそんな景色しかないのではないかと思っていた。 一方で、日本人よりも日本の文化を理解していたであろうラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は Old pond―frogs jumped in―sound of water. とこの歌を訳した。「frogs」、つまり

          「ストーリーが世界を滅ぼす」と古池に飛び込む蛙

          「忘れられた巨人」と忌野清志郎の「デイドリーム・ビリーバー」

          リドル・ストーリーという物語の形式がある。日本で1番有名なのは芥川龍之介の「藪の中」だろうか。「作品中に謎を残したまま終わる物語」で、中でもそれのこと自体が主題になっている物語のこと。 その定義からいくと、カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」はリドル・ストーリーとは少し違うのかもしれない。結末は提示してある。ただ、この結末をどう解釈して良いか明確な答えがない。そして、解釈次第で全く結末に至るまでの印象が変わってしまう。 カズオ・イシグロは僕の1番好きな作家で、代表作「日の

          「忘れられた巨人」と忌野清志郎の「デイドリーム・ビリーバー」

          体験としての読書と休職

          この3ヶ月体調を崩して休職をしていた。 何か大きなことが有ったわけではなく、 数年前に罹患した癌の手術、昨年5度に重なったコロナやインフルエンザへの罹患、40代に突入した体、そうしたものから免疫力をふくめて大きく気力体力が衰えてしまっていた。 それまでできていたあと少しの粘りがなくなりつつあることは自覚していた。多忙な時期が続いた事もあり、少しずつ少しずつ疲労が積み重なっていた。 気がついた時には、読書が出来なくなっていた。 子供のころから読書だけはどれだけコンディションが

          体験としての読書と休職

          読書と体験

          僕が学生の頃はたまに、本ばかり読んでいても実際に外に出て体験をしないと何にもならない…というようなことを年長の方から言われることがあった。 最近は読書をする人自体が減ってきたからかこうしたことを言われることは少なくなったように思うが、趣味欄に読書と書いているだけでこうしたネガティヴな反応をされることが昔は少なからずあった。 当時の自分は、そうしたことを言われるたびに何か違和感を感じながらも、その違和感の正体がつかめず、なんとなく黙って飲み込んできていた。 ただ、今はその正

          本noteについて

          このnoteは、 双極性障害の当事者であり、 いち会社員であり、 千葉ロッテマリーンズの大ファンである、 いち市民が、 日々の読書を通じて、一見関連のなさそうな何かを思いついてしまったことについて書いてみようという、 そんなnoteです。