杉にいのエッセー: 50代で総入れ歯? 歯なしの話
人生100年時代、歯をどう扱うかは個人の自由、あってもなくても代替品で為せばなると思い込み、根のある四本を残し、総抜歯を完了させたのが2019年の7月でした。その四本はエナメル層を無くし平滑化、総義歯用のアンカーを埋め込み、定位置化。入れ歯も芸能人並に美しく完成しました。
当初インプラントも検討しましたが、頭蓋骨の骨が薄く、アンカーを支えきれないことが判明したので総入歯にしました。
わたくしごとではございますが、元々歯並びが悪く、出っ歯で、タバコや糖尿病から歯槽膿漏が進んでおりました。
また小中学生から歯磨きが嫌いで、歯科医も天敵と考えておりました。
総入れ歯としたことで、今後はめんどくさい毎朝の歯磨きやらフロストやら定期的な歯科検診から解放されると完成時は大変喜んでおりました。
抜歯手術は総合病院の歯科口腔外科で全身麻酔をして実施、5日ほど入院しました。
【個人の感想】
しかし、目が覚めると知らなかった現実があったのです。生き地獄とはこういうものかと思い知りました。
⑴ 体は成長する
人はいくつになっても成長します。タヒぬまで成長し続けます。老化という、身体の萎縮もそうです。ところが入れ歯は作ったその日から成長しません。つまり、完成した翌日から合わなくなるのです。
⑵ 発泡スチロール
義歯は完成した当初はなめらかで、余計な出っ張りや匂いもなく、噛み合わせも設計通りでした。
でも、この違和感は、想定していませんでした。
まず、超がつく味変。今までと全く味が違う。
第一に食感が無い。噛み応えも無い。シャキシャキ・バリバリ、第二に熱も感じない。
歯触りが歯茎ざわりとなり、歯で感じていたキーンという冷たさやハフハフ熱いものを咥えてから口にする時の感覚がない。
いきなり来る違和感がヤバすぎでした。
歯がある人には想像しにくいですが、イメージとして、発泡スチロールの板を上下2枚口のサイズに切って噛んでいるような感じです。夏の暑い日のかき氷や、冬の寒い日のおでん。味は舌だけで感じていたのではないことを、歯を無くして初めてわかりました。
また、入れ歯と歯茎をつなぐ接着剤の味。激烈、無味にしてほしいです。ハッカ味は装着時は爽やかですが、お料理には合いません。全ての食べ物がハッカ味に染まってしまって、コレも歯なしの生活を助長している要因です。
⑶ことばの発音。歯間に隙間が無いので、息をぬく発音ができません。英語もドイツ語も。果ては日本語も怪しいです。本人はうまくこなしているつもりでも、相手が首を傾げる頻度が増えて、コミュニケートできていない感が孤独を深めます。
また、声色も変わります。義歯を支える樹脂部分の厚みの分、口の中が狭くなり、発声時の響きが変わって、声が出しにくくなります。
⑷歯無しライフ 体の成長に伴い、だんだん入りにくくなる発泡スチロール入れ歯は、そのうち、無くてもいいという気持ちになって来ます。
ところがどっこい、今度は入れない地獄(完全歯なし地獄)が待っているのです。
具体的には、噛みきれない地獄です。
これは実体験ですが東京は神田の有名なお蕎麦屋さんでの出来事です。 ざるから手を上に最大限に伸ばして麺を取って、つゆにつけて、いざすすったら、切れないっ!前歯がないから。それまでは無意識のうちに適度な長さに切っていたのかと。そこでやばかったのが、切れていない蕎麦は喉に詰まるということ。咽せるとかいうレベルでは無くて、息が突然出来なくなるのは恐怖でしかありません。喉に手を突っ込んでながーい蕎麦を手品のようにツルツル喉から取り出すと、お店の人が目を丸くして、急いでお水を持ってきてくれました。詰まった状態では、水すら通らないんです。
以後、蕎麦屋にもラーメン屋にもハサミ持っていってます。
お蕎麦だけじゃありません。 大好きだったステーキも、ナッツ類も乾き物も、椎茸もりんごもお漬物も噛めないんです。 飲めるものしか食べれない。まさに地獄です。これが現在の状況です。
一応食べる時はモグモグしますが、歯茎の奥の骨で噛むため、必要以上に顎を閉じねばならず、咀嚼力、顔の変形が顕著です。
⑷ デスリスク 誤嚥性肺炎・・・これから毎日くる可能性のあるデスリスク。 私の親世代に多い、歯がなくなると増える病変。 自ら歯を無くすことを選んでしまった私は、これに細心の注意を払って食事をしています。
もうムシャムシャ、ガツガツ食べられない。悲しすぎます。絶望感満載です、笑。
【提言】
本書をご覧になっているみなさんを、勝手ながら4種類に分類して提言したく、ご笑納ください。
⑴歯科医関係者の皆様
啓蒙活動を強化してください。
私のように生まれつきの発達障害や先天性の持病のある人間でなくとも、正しい歯磨を習慣にできていない子どもは、大勢います。そういう人にもわかるように、歯がなくなるとどうなるか、教えてください。歯医者が味方であることを植え付けることが肝要かと思います。
定期検診の重要性を呼びかけてください。
子どもの頃鍵っ子で親から毎日磨けとは言われませんでした。歯科医が好きでなくなったのも、抜歯するまで放置だったのと、椅子に縛られ麻酔なしで抜かれたのがトラウマになったからかも知れません。
私は帰国子女で、日本の義務教育を知らないのですでに実施されているのでしたら、無視していただきたいですが、保健体育等に織り込んで、繰り返しわからせることが大事だと思います。
子供にわかりやすい童話を作ってみました。ご笑納ください。
(幼児向け童話)
[#杉にいの童話・・・・歯磨きの森とピカピカの妖精🦷✨]
(小学生高学年向け童話) [#杉にいの冒険童話・・「歯の勇者デンティストとミュータンスの戦い」
⑵ 教育関係者の方々
昔中曽根内閣時代、臨教審の素案作成に関係してつくづく思ったのは、教育とは実に長い道のりをコツコツ進める事だという事でした。農業に同じく、種まきから毎日の状態管理、水や肥料、害虫駆除、病気対策、自然災害対策とあらゆる側面を丁寧に設計し、実施して、時には意見相違を調整して、最終的には教養のある国民を形成することが目的に一丸となって取り組んでいる。その中に、体育の一部分として歯の体育・保全の重要性を教えて頂きたい。
ドイツでの経験ですが、歯医者さんに虫歯治療で行くと、みっちり座学がありました。論理的に何が悪くて放置するとどんなリスクがあるか教わりました。
一方アメリカでは麻酔の代わりに笑気ガスを使うところが多くて、通う恐怖はありませんでしたが、無保険なので高額請求に頭を抱えていた覚えがあります。
⑶ 食品関係者の方々
飲める食品の開発・販売をおねがいします。美味しければ尚嬉しいですね。ラミネートパックにして宇宙食や災害食に転用してもいいと思います。嚥下の問題はあるとは思いますが、あと20年は高齢人口が増加するでしょうから、ビジネスチャンスです。よろしくお願いします。
⑷ 一般リーダー 長々とダル文読んで頂きありがとうございました。後悔先に立たずと言いますが、歯はながーい友達です。あなたの大事なカラダちゃんです。大事にしてあげてください。計画的に育てていくのを楽しんでください。
🔸『歯が無くなることで起こる影響』は、健康や生活の質に幅広く影響します。以下に主な7つの例を挙げます。
1. 咀嚼力の低下
歯がないと食べ物を噛む力が弱くなり、消化不良や栄養不足を引き起こす可能性があります。
2. 発音への影響
歯は舌や唇と連携して発音をサポートしています。特に「サ行」や「タ行」の発音がしにくくなることがあります。
3. 顔の形の変化
歯が失われると顎の骨が痩せてしまい、顔がこけたように見えたり、老けた印象を与えることがあります。
4. 噛み合わせの不調
歯がない部分を補うために他の歯が動き、噛み合わせが悪くなり、顎関節症などのトラブルが起きることがあります。
5. 胃腸への負担
よく噛めないことで食べ物が十分に細かくならず、胃や腸に負担をかける可能性があります。
6. 心理的な影響
歯がないことで笑顔に自信がなくなったり、人前で話すのが恥ずかしく感じるなど、心理的なストレスが生じる場合があります。
7. 歯列の乱れ
歯が抜けた箇所を埋めるように隣接する歯が傾いたり、上下の歯が移動したりすることで、全体の歯並びが乱れる可能性があります。
早めの対応(例えば義歯やインプラント)をすることで、これらの影響を最小限に抑えることができるでしょう。
なお、わたしの総義歯化は、歯槽膿漏及び糖尿病に起因する歯のぐらつきを解消することが目的でした。
歯槽膿漏にならないためにも、日頃の生活習慣改善・定期検診はマストです。
以下にメモとして、歯槽膿漏のリスクを列挙します。詳しくは、かかりつけつけの歯医者さんにご確認ください。
歯槽膿漏(しそうのうろう)は、歯周病の進行した状態で、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が広がる病気。以下は歯槽膿漏のリスクや影響についてのポイントです:
歯槽膿漏のリスク
1. 歯の喪失⭐️
歯槽膿漏が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちる可能性があります。
2. 全身の健康への影響
歯周病菌が血液を介して全身に広がることで、以下のリスクが高まる
①心血管疾患(動脈硬化や心筋梗塞)
②糖尿病の悪化
③呼吸器疾患(肺炎など)
3. 口臭
歯槽膿漏に伴う膿や細菌の増殖によって、強い口臭が発生することがあります。
4. 歯ぐきの痛みや腫れ
歯槽膿漏の炎症が悪化すると、歯ぐきが痛みやすくなり、出血や腫れが頻繁に起こります。
5. 生活の質の低下
噛む力が弱くなり、食事や会話に不便を感じるようになります。
歯槽膿漏のリスクを高める要因
1. 不十分な歯磨き
歯垢や歯石が蓄積すると、歯槽膿漏の原因になります。
2. 喫煙
喫煙は歯ぐきの血流を悪化させ、免疫反応を弱めます。
私はコレでタバコ🚬をやめました。
3. ストレス
ストレスは免疫力を低下させ、細菌感染を助長すします。
4. 糖尿病
血糖値が高いと感染への抵抗力が低下し、歯周病が悪化しやすくなります。
5. 遺伝的要因
家族に歯周病の患者がいる場合、リスクが高まることがあります。
予防方法
1. 正しい歯磨きとフロスの使用
毎日2回の歯磨きとデンタルフロスでの清掃が効果的です。
2. 歯科検診の定期受診
少なくとも半年に1回の歯科検診を受け、歯垢や歯石を除去してもらいましょう。
3. 健康的な生活習慣
禁煙やバランスの取れた食事、適度な運動が歯周病予防に役立つとのことです。
4. 早期治療
歯ぐきの腫れや出血を感じたら、早めに歯科医に相談しましょう。
歯槽膿漏は進行する前に対処することが重要です。気になる症状がある場合は、早めの歯科受診をおすすめします。
歯は一本抜けると、立て続けに脱落します。そうなると、日々の食事どころではないです。
また、わたしの実母は生前、歯槽膿漏と糖尿病とアルツハイマーの闘病をしておりました。
然るに、この三種は相性が良い様で、ほんとうに人間を食い物にします。
以下もわたしの備忘録です。認知症と歯槽膿漏について
🔸歯槽膿漏(歯周病)と認知症の関連性については、近年の研究で注目されている分野です。明確な因果関係はまだ完全には解明されていませんが、以下のような可能性やメカニズムが指摘されています。
歯槽膿漏と認知症の関連性
1. 歯周病菌と炎症の影響
歯周病菌(特に “Porphyromonas gingivalis”)が血液や神経を通じて脳に侵入することが確認されています。
この菌が脳に炎症を引き起こし、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」や「タウタンパク質」の蓄積を促進すると考えられています。
2. 慢性的な全身炎症
歯槽膿漏による炎症は口腔だけでなく全身に広がります。
慢性的な炎症が脳血管障害や神経細胞のダメージを引き起こし、認知機能の低下を招く可能性があります。
3. 心血管疾患との関連
歯槽膿漏は動脈硬化や心血管疾患を悪化させることが知られていますが、これらの疾患が認知症のリスクを高める要因となります。
4. 噛む機能と脳の活性
歯を失うことで噛む機能が低下すると、脳への刺激が減少し、認知症のリスクが高まる可能性があります。
研究の例
アルツハイマー型認知症との関連
ある研究では、アルツハイマー病患者の脳から歯周病菌が発見されました。このことから、歯周病がアルツハイマー病の発症や進行に寄与している可能性が示唆されています。
高齢者の口腔ケアと認知症リスク
高齢者で歯周病の治療や口腔ケアを徹底することで、認知機能の低下リスクを軽減できる可能性があると報告されています。
予防策
1. 口腔ケアの徹底
歯周病予防が認知症リスクを減らす可能性があります。定期的な歯科検診と適切な歯磨きが重要です。
2. 全身の健康管理
糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患を予防・管理することで、認知症リスクの低減が期待できます。
3. 噛む力を維持
歯の健康を保ち、噛む機能を維持することで脳への良い刺激が続きます。
4. 栄養管理
オメガ3脂肪酸を含む食品や抗炎症作用のある食事が、歯周病や認知症予防に役立つ可能性があります。
総括
歯槽膿漏は、認知症の直接的な原因ではありませんが、全身の健康と密接に関連し、認知症リスクを高める可能性があると考えられています。歯や歯ぐきの健康を守ることは、認知症予防にもつながる大切な取り組みです。
読者の皆様も、同じ轍を踏まれません様、心からお祈り申し上げます。
以上、
歯なしの話でした。