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そして私の【ハンドクリーム】

【ハンドクリーム】
冷え込みが増す冬の夜、彼女はいつもの席に腰掛け、指先にハンドクリームを丁寧に塗り込んでいた。触れ合うたびに彼の温もりを思い出す。その手はもうここにはないけれど、彼のぬくもりは、こうしてクリームの香りに溶け込んでいる。遠くから聞こえる街のざわめきが静かに消えていく中、彼女は心の中で彼に再び触れるのだった。

そして私の【ハンドクリーム】
冷え込みが増す冬の夜、彼女はいつもの席に腰掛け、指先にハンドクリームを丁寧に塗り込んでいた。触れ合うたびに彼の温もりを思い出すも何も、その手はいつも私のすぐそばにあり、彼のぬくもりは、こうしてクリームを塗った顔にまで彼が顔を近づけてくるので、クリームの香りを感じる余裕もない。遠くから聞こえる街のざわめきが静かに消えていく中、彼女は心の中で彼に再び(くっつき過ぎやっけん、もう少し離れてほしかー。身動きとれんとよー。)と訴えるのでありました。

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