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感動した建築:菅野美術館 編


こんにちは、佐藤研究室4年の澤田です!

佐藤研究室では、設計のヒントを探るゼミの一つとして、[感動した建築]の発表を行っています。

第一弾 前川國男邸 編、第二弾 松原市民松原図書館 編、第三弾 後藤昭夫藝術館 編に続いて今回が第四弾となります。まだ第一弾・第二弾・第三弾をご覧になっていない方は、こちらからご確認ください!


第四弾では、私が5月に発表した感動した建築、阿部仁史さん設計の『菅野美術館』についてお話します!


※本来、インターネット上への掲載は禁止されていますが、今回の趣旨について説明の上、菅野美術館から掲載の許可をもらっています



1.菅野美術館について


外観_北面

この美術館は、建築家 阿部仁史さんが設計され、宮城県塩竈市の住宅街にあります。

成熟したコールテン鋼で覆われた建物は、10m×12m×10mのヴォリュームで、展示品の彫刻に対応するように8つの小さな空間が内容され、それらが連続する構成となっています。

重量感のある外観とは対照的に、真っ白な内部空間が展開しています。



2.私が感動したポイント


ポイント①作品が空間をかたちづくる

連続するそれぞれの展示室は、当初から8点の彫刻作品の常設展示を想定していたため、自然光を十分に利用して設計されています。

また、作品に対応して展示空間を構成しているため、彫刻作品の鑑賞と展示室の空間が分離することなく、作品と空間が一体となった体験をすることができました。

内部空間_作品A
内部空間_作品B
内部空間_作品C

様々な角度で複雑に配置された壁と鋼板に施された凹凸がつくりだす陰影が、彫刻作品をさらに魅力的に見せていました。

また、展示室に差し込む自然光により、時間帯や気候によって彫刻の見え方も変わります。

作品が展示空間をかたちづくり、空間も作品をよりよく見せるような工夫がされており、作品と空間が緊密な関係になっていました。


ポイント②来館者を導く

内部空間_高低差

多角形の空間が螺旋状に連なる展示室は、敷地の高低差を利用して作品を巡る鑑賞体験になっています。

高低差があるため、様々な角度から彫刻作品を見ることができ、壁によって見え隠れするように展開されています。


内部空間_光1
内部空間_光2

また、作品と作品のつなぎの空間では、計算された壁と光によって洗練された空間がつくりだされています。

スリットから差し込む光が真っ白な壁・床・階段に美しくあたり、礼拝空間のような神秘的な空気が広がっていました。



3.感動する空間とは



その時間、その土地、その建築だからこそつくり出された「唯一性のある空間」に人は心を動かされ、ひたることが出来ると考えます。

私が今回ご紹介した菅野美術館では、そのような唯一性を感じる場面がいくつもありました。

竣工から20年近く経過し成熟された素材の質感、冬の夕暮れに差し込む光、一つ一つの彫刻作品がかたちづくる空間。


また、その唯一性に加えて個々の体験により感動する場面は違うかもしれません。

感動には、喜びや悲しみなど様々な心理状態があるかと思います。
そうした感動する基準や観点は、個々の思い入れや具体的な体験により、多様な広がりをもち、一人ひとり異なります。

出会う建築が持つ、また自身が感じる、空間の唯一性を評価することが、感動する空間設計のヒントにつながると考えます。


外観_三角窓




(学部4年 澤田明里)




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