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不労所得

知り合いが不労所得にあこがれを持っている。高学歴だし、若くて夫婦共働きだけど、何かあった時のために不労所得が欲しいので、不動産投資が良いのか株が良いのか、みたいなことを言っている。

不労所得にあこがれる気持ちはわからないでもない。
でも、あこがれて手に入れるものではない、と私は思う。
何かあった時のバックアップなら、生活保護がある。別に個人であらゆるリスクに備えてせっせと蓄財する必要は無い。投資が盛んだと言われるアメリカだって、3人に一人は老後資金なんてなくて一生働く覚悟らしいよ。

不労所得とか言い出す人は、手っ取り早く儲ける方法を知りたい、と言うのと発想は一緒だと思う。
世の中にそんなにうまい話は無い。まずこの前提に立たないと、変な投資話にだまされる。という意味でも「不労所得にあこがれる」とかむやみに言っちゃだめだ。

比較的安全に資産を増やせる見込みの高い「株式のインデックス投資」の場合、年利回りはせいぜい数パーセント。1千万円賭けても年に数十万円。賭けている間、1千万円を崩すと利回り部分も減る。例えば、年300万円で暮らしている人が、1千万円賭けて年に数十万円を手に入れているとしても、無職になって元本を取り崩すと利回り分を全部取ってあったとしても4年で無一文になってしまう。
不動産は少ない自己資金でも比較的容易に借入できる点では株より効率良く見えるが、長期的な値上がりが見込めるのは一部の物件だし、不労所得と呼べるレベルまで稼ぐには不動産業を営む勢いじゃないと無理だ。家賃収入と借金返済の自転車操業は不労所得とは呼べない。
FXや仮想通貨などの投資、ギャンブル、宝くじはマイナスサムゲームなので不労所得獲得源としては考慮に値しない。
印税などは、本来受け取るべき報酬を長期に分けて受け取っているようなもので、才能と努力と強運の結晶なのだから、これを不労所得というのはちょっと違う。

と考えていくと、純度が高い不労所得は「親や親戚が資産家で、まとまった遺産を手に入れる」ことだろうか。不労所得にあこがれるあまり、親の旅立ちを指折り数えて待つようなことは人としてどうかと思うが(もちろん、そういう関係性も無くはないのだろうけれど)。

私が投資信託や個別株をやり始めたのは、収入の割に支出が低くて、積みあがる預金がもったいないな、と思ったからだった。不労所得が得たくて、というのではないし、マイナスになるリスクも承知していた。始めた当初は何歳までに会社を辞めたい、とかは無かったし、いくら貯めたい、というのも無かった。それどころか、夫が細々フリーランスだったので私も一生働かねば、くらいの厳しい試算であった。
結果的には大きく貯めることはできたけど、それなりに過酷な住環境に耐えての話であり、人並みに新築住宅を買ってローンを組んでいたら、ここまで貯めることはできなかった。稼いでいるからとゴルフや海外旅行などの金のかかることもしなかった。

株の配当金はそれなりの金額ではあるが、今は全部株を買うのに使っている。いずれは仕事を辞め、いずれは株を取り崩す日も来るだろうけれど、ライフスタイルが急に派手になることは考えにくい。華やかに暮らして貯まらないか、地味に暮らして貯めるか、この二択なんである。不労所得、あこがれるものではない。