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年収いくらだったら暮らせるのか

年収500万円前後(手取り年収400万円前後)という設定で「スタバが贅沢」「毎日弁当持参」だから『悲惨』みたいな記事がゲンダイや幻冬舎のWebニュースにしばしば流れてくる。大手出版社というのもそこそこ金回りが良いので(講談社の平均年収は1千万円超)、非正規で年収500万円なんてこの世の奴隷くらいに思っているのだろう。

我が家の場合、夫婦と息子二人、格安で借りられる都内のオンボロ社宅に住み、子どもたちは高校まで公立。上の子が高校3年まで年間支出は300万円だった。今は大学の学費がかかるのと普通の賃貸住宅になったことで年間支出は600万円くらいになってしまったが、大学の学費負担は下の子が卒業するまでなので、これは10年にも満たない一過性の支出増である。彼らが独立すれば住むのはもっと小さい家で良いし首都圏でなくても良いくらいなので、年間支出は300万円未満になるだろう。我が家は節約はしているが、決して切り詰めてはいない。国内近場だけど年に1〜2回は旅行に行くし、子どもたちは習い事も継続してるし、猫を飼ってる。外食はあまり行かないが、それはお金というよりライフスタイルの問題だ。

手取り年収が360万円あれば4人家族で健康で文化的な生活が可能、というのが表題への解。

ただしスタバは当たり前ではなくて贅沢品だと思ってる。砂糖水に何百円も払いたくない。
弁当持参は好きな食べ物で効率よく健康維持できる最高の方法。節約はおまけだ。
昭和の一億総中流の時代だって、日々の暮らしは地味で慎ましいものだったのを思い出せば、年収500万円をことさら「かわいそう」とか「格差社会」とか煽る必要も無かろう。
それどころか年収500万円(手取り年収400万円前後)もあったら、年40万円も貯蓄可能なのだ。その40万円で株の投資信託をしていけば、配当のみでも年利1%、実際には株価の上昇含めて、かなり控えめに予想しても年利3%は見込める。10年積み立てれば450万円弱、20年積み立てれば1千万円以上だ。裕福とは言い難いけれど、老後の備えとして悪く無い金額だろう。

そもそも、アメリカやイギリスの格差と比べたら日本の国民間の経済格差は小さい方だ。
日本でも青山の高級マンション住まいと足立区の公営住宅住まいでは手取り年収で5倍くらいの差がありそうだが、街の中に混ざれば見た目で区別するのは難しいし、金持ちのボンボンとシングルマザーの子が高校や大学で交流する場面も普通にある(国公立大学の出身者なら同級生を思い出してみてほしい)。
アメリカだと、プールと広い芝生のある家で犬も猫も飼う人々と、街外れのトレーラーハウスで暮らす人々、どちらもどの街にも当たり前にいるけど、彼らの人生は決して交錯しない。
イギリスも住む世界が分断されているので、生まれの階級格差を超えることなどほぼ不可能。

戦前の日本には華族制度があったが、敗戦で何もかもリセットされて特権階級は極々一部。そして各種規制が働いて、突出した勝ち組企業も無く、下請けは下請けなりに食えてる。給与が30年間上がっていないと騒がれるけど、物価も30年間上がってこなかった。生活保護をはじめとした各種社会保障もある。
もっとも、フリーランスは別だ。フリーランスは本当に食えない。フリーランスになる気概と実力のある人は、会社員なんて創造性の無い家畜だと思っている節があるけど、クソつまんない経理仕事にさえ創意工夫は求められるし、世の中は人手不足なのでブラック企業からの転職は以前より簡単だ。

というわけで、家族持ちなら世帯年収手取りで360万円(月30万円)、単身なら180万円(月15万円)あれば健康で文化的な生活は送れるから、卑屈になる必要は何もない。
これより給与が少ない人は、この水準をまずはクリアしてほしい。そして可能ならその上を目指そう。
さらに、収入の2割を目標に貯蓄と運用も頑張ろう。年金収入を手取り年収360万円にするのは相当に難しい。老夫婦二人で旅行などに行かなければ月間支出は20万円程度になると思われるが、年金収入がここまで多くない人が普通だろう。そこに備えるために金融資産はある程度必要だから。