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オーガニックと害虫・寄生虫は不可分
1960〜1970年代の公害を経て、いろんな法律もできたし市民の意識も向上した日本。1941年生まれの私の母も、農薬は危険、添加物は毒、化学調味料は石油、合成洗剤は悪、といったキャンペーンにがっつりと乗っかって、生活クラブ生協を愛用していたし、廃食用油を石鹸にリサイクルする活動に協力し、粉石鹸で洗濯し、一時期は一坪農園なども借りて無農薬野菜を作ってた。
そんな母の元で育った私は「科学の子」。農家出身の母とは違って虫は大嫌いだったし、化学調味料はグルタミン酸で、天然物にこそ毒があることも知っている。だから、オーガニック礼賛な人々を醒めた目で見ていたし、子どもたちには普通に店で売られてるものを食べさせてた。
さらに今となっては、農薬も食品添加物も毒性試験を経て許容摂取量なども加味して認可されてること、抜き打ち検査で残留農薬をチェックしていることも知ってる。盗品をトラックで売ってるような八百屋はともかく、スーパーで買う国産野菜に付いている程度の農薬で健康被害は無いし、日本の肉は無闇に成長ホルモンを使っていないし感染症のコントロールも徹底している。
で、品川区のオーガニック給食だ。
最初にこのニュースを見た時の感想は「またリベラル政治家が、よくわかんない活動家に乗せられちゃったな」であった。あと、都会の自治体は金持ちだな、こんなことに使うより地方の災害復興にお金を回してあげて、とも思った。
オーガニック農業は、今や国策のようで、品川区の決定も国からの補助金が出るからみたいね。穿った見方してごめん。国が有機栽培を奨励するのは、農薬の安全性がどうこうというよりは、化学肥料や農薬を使うと土壌が極端な元素バランスやになりがちで土壌微生物も減ってしまうから、持続可能な農地として維持しましょう、ってことなのだと理解している。これ自体は、限られた農地を不毛の地にしないために必要なことだろう。
ただ、有機栽培はどうしても害虫との闘いになるので、農家さんの手間が増え、生産コストも上がる。それに、1950年代くらいまでは有機栽培100%だったために回虫天国だった日本。さすがに今の有機栽培は肥溜め運用をしていないと思うけど、ナメクジやカタツムリ由来の広東住血線虫はまだいる。有機栽培野菜は火を通さないと怖い。
オーガニック野菜の給食導入で、何より大変なのは給食調理員さんだろう。有機栽培の葉物野菜は下処理がすごく大変。アブラムシだのヨトウムシだのが高確率で付着してる。
虫を見逃したら児童生徒が食べる。食べたってどうってことはないけど「先生!サラダに虫が!」と誰かが言いだしたら、給食に異物混入で教育委員会は平謝りだし世論はプンスカ。
品川区はそういう炎上を受け入れる覚悟はできてるのかしらね?
お母さん方、子どもが給食で虫や虫の糞を食べても気にしない?
私自身は、母が上記のような方針だったので、食卓やお弁当に小さな虫が混入するのはある程度仕方ないと受け入れてたし、虫がいるぐらいで食べ物を残すような無礼はしない。地方にいた時は地元農家の新鮮野菜(無選別なので高確率でヨトウムシやナメクジ混入)もよく食べたし、某所で食べた地場産有機栽培野菜のサラダに、どう見ても「終齢ヨトウムシの糞」が混入してたのも、めざとく避けつつ可食部を残さず食べた程度には耐性はある。
家でサラダはほとんど作らない。生野菜にたいした栄養は無いし、上記のように広東住血線虫の方が怖いから。葉物野菜を生で食べる時はものすごく丁寧に洗う。有機農法の野菜は、それしか無ければ買うけど、くらいには消極的。虫とその痕跡を見つけるのが無駄に得意になってしまったので。コナガの幼虫の糞かな、みたいなのを見ちゃうと、そっと売り場に戻すよね。
都会のご子息が、このような害虫たちとしっかり対峙していくのか、オーガニックを推奨しながら食べ物の異物は許さないダブルスタンダードになるのか、ちょっと興味がある。