糸端と布端
糸端と布端のほつれ防止処理は、手芸の基本にして永遠の課題だと思う。
メジャーな技法はこのあたりも洗練されてる。一目ゴム編みの伏せ方など、芸術的過ぎて、始末するたびに感動する。まつり縫いも、ミシンで縫う工夫には感動する。感動水準が低すぎる? いやいや、有志以来の魚取り網や衣類製作に、連綿と改良と製作を続けてきた技術の結晶よ? 発明者の名前も、いつ頃どの文化圏でその技術が確立したのかも語られないけれど、人類の叡智が詰まってるのよ? 感動せずにいられませんよ。
これがマイナー手芸になると、糸始末は力技になる。私が好きなtattingでは、一般的には糸端をしっかり結び、ボンドで固める。美しくない。糸端をきれいに始末するためには、magic threadという仕込みが必須。これはこれでパズルみたいで面白いけど、かなり力技感がある。
オヤはもっとすごい。ライターで糸端を炙って軽く溶かして目立たないようくっつける。この方法を初めて知った時は驚愕した。オヤはそれなりに伝統ある手芸だと思うのだけど、化繊糸をライターで炙って溶かすなんて、どんなに遡っても20世紀の手法じゃん。
だが、この「ライターで炙るほつれ止め」は実に使い勝手が良い。伝統手芸に採用したトルコ人(かどうかはわからないけど)、トテモ合理的ネ。
パラコードの加工には必須だし、サテンリボンを加工する時も切り口をさっと炙っておくとスマート。
いや、普通のご家庭にパラコードもサテンリボンも、そうそう無いのは知ってる。でもさ、例えば物置の鍵にサテンリボンを通して、両方の切り端を重ねてライターで炙れば簡単で軽やかなキーホルダーになるでしょ。薄い色のリボンならペンで記入もできるし。
パラコードも端を炙って一結びするだけでキーチェーンやウォレットチェーンになる。うちはサザエさんもびっくりのポンコツ一家なので、大事なものは全部物理的に紐付け。私のカバンも紐だらけ。
というわけで、私の裁縫箱には安いライターが入ってる。最近の100円ライターは、子どものいたずら防止で握力が必要なのが難である。