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バラマキか無償化か(後編)

なんか前後編にするほどの内容ではなかった気もするがちゃんと書こう。前編は下記。

まずは復習も兼ねて再分配方法とそれぞれの利点欠点を整理。

それぞれの再分配方法の良いところ

1.徴税額で調整

細かい調整が効く。ほとんどの人が払うので納得感がある。

2.サービス利用料で調整

細かい調整が効く。サービスを利用しない自由もあるので納得感がある。

3.給付

即効性がある。受給者のお得感が大きい。

4.無償化

即効性がある。

それぞれの再分配方法のダメなところ

1.徴税額で調整

消費税や国民年金保険料のような逆進性の高い仕組み。専業主婦あるいは家事を優先させる主婦が優遇されがち。自営業などは経費の範囲に曖昧さがある。

2.サービス利用料で調整

調整可能な段階設定が徴税より粗くなりがち。

3.給付

手続きが煩雑。出産育児一時金のように、給付金額を上げるとサービス側も値上げする場合がある。

4.無償化

再分配として認識されにくい。

総合的に日本の再分配の良いところ

こうして書き出してみると、各方面にさまざまな方法で再分配が行われている。特に出産育児と専業主婦はしっかりと保護されている。

総合的に日本の再分配のダメなところ

一貫性が無いため手続きが煩雑。手続きが煩雑ということはコストがかかっている。政府や行政のPRがほとんど無いので納税者の不満がつのりがち。

バラマキか無償化か(タイトル回収)

結論的には「無償化の方が優れている」。
個人的な経験だと、子ども手当の実現と引き換えに16歳未満の扶養控除がなくなった時、社会全体で見ると改悪なのでは?と感じた。扶養控除も事務手続きは発生しているのだろうけど、子ども手当は自治体が年1回の確認を各家庭に手紙で送り、受益者は書類を揃えて記入して返送し、自治体から各家庭への振込には送金手数料がかかる。バラマキのわかりやすさやお得感と引き換えに、コスト増が許容されている。コスト負担者が行政側だと批判が起きにくいが、税金の無駄遣いだし、コスト増は再分配額の目減りでもある。
目的は地方振興だが結果的にバラマキである「ふるさと納税」もそうだ。納税額のかなりの部分がポータルサイト事業者やPRチラシ作成の広告代理店に流れている自治体もあるだろう(女性誌や旅行雑誌のような洒落た体裁のパンフレットを見たことはないだろうか)。返礼品と経費が納税額の50%までになるようにするルールがあるらしい。つまり納税額の半分は自治体に入らないのだ。コスト増を「地域経済の活性化」という呪文で誤魔化していないだろうか?
バラマキの欠点のもう一つは、最終的な受益者が費用を回収してしまうことである。具体的には、出産育児一時金が増額されると産科の出産費用も上がる。産科が24時間365日営業の激務で、少子化で採算が合わないのも事実だが、産科医の待遇改善と一時金は別に考えるべき課題であろう。受益者としては出産関係を健康保険適用にしてしまうのがわかりやすい。医療関係者の待遇改善については、病院や診療所経営を公的に行い、地域偏在や診療科偏在にも規制をかけていくことも対策になるだろう。
ベーシックインカムも、実現した暁にはベーシックインカムありきの給与水準にするブラック企業が多発しそうである。例えば、元の月給は16万円だが、月3万円のベーシックインカムが実現した途端に月給13万円に減らすとか。そこまであからさまでなくとも、社会に循環するお金が増えれば物価も上がり、ベーシックインカムによる3万円の収入増が実質2万円まで下がってしまうインフレはありそうだ。それはそれで経済対策としてプラスだが、ベーシックインカムを実現できる財源があるなら、低所得者の減税を進めるか、生活保護水準の向上をする方が「富の再分配」の効果は大きいだろう。

無償化は、ありがたみが薄れるが、総合的にはコスト減になることが多いように思う。学校給食費の無償化を例に取ると、払わない家庭から取り立てる教員や事務の時間と労力、困窮家庭への複雑な手続きによる補助金給付などの手間を解消できるし、予算の増減に保護者の反応を伺う必要も無くなる。無償化のありがたみが薄れないように、行政は時々PRすると納税者の理解も得られることだろう。
一方で、無償化が機能しない事例としては、生活保護受給者が精神疾患や不眠を装って向精神薬や睡眠薬を複数の医療機関から受け取って販売することで小遣い稼ぎをする、という事象が挙げられる。これはマイナンバーカードの保険証化によって防げると考えている。不自然な処方をする病院や薬局は、厚労省がどんどん営業停止にすれば良いし、そのための密告を奨励しても良い。これらの薬の売り上げが激減して困るのは製薬企業だが、仕方ない。
ついでに徴収側にもちょっと触れると、従量課金ではなく一律に全員から集めているNHKの受信料と国民健康保険と国民年金は、非常に逆進性が高い上に回収コストが高いので、税金に一本化してしまう方が良い。ホテルの部屋のテレビ一つ一つまで課金対象にせずとも済むはずだし、年金不払いの挙句に満額生活保護になるよりは、総合的に大きなコスト削減となって、税金は有効活用される。生活困窮者に不定期に小出しにばらまく小手先の策ではなく、持続可能でシンプルな方法を考えてもらいたい。