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美容院→ひよこ豆→銀平町シネマブルース

  朝、そうだそうだ美容院だったと思い出した。ずっと何年も同じ美容院だ。自転車を飛ばす。昨日降ってきた雪は、朝になりほとんどが溶けていた。白い色味が地面に少しある事で、辺りが眩しく見えた。
 同世代の美容師さんは本当に話しやすい。空き巣の話しと、youtubeで見た鍵開け職人さんが小判を見つけた話を聞いて「自宅の500円玉貯金が取られたら落ち込む」と、ありもしないだろう事を面白く話してくれる美容師さんだった。次回も訪れるのが楽しみになる。
 丁度昼食の時間になったので、北口にあるカフェ「ひよこ豆」に行く。女性が1人で切り盛りしているお店で、お水や食器の片付け等はセルフで行う。塩麹を使った料理が売りで一つの定食に付いてくる小鉢の品数も多く、いつも必ず美味しいと分かっているから嬉しい。しかし、なにぶん店主1人なので、お勘定や、食器を下げるタイミングが憚られ、店内には緊張が走る。今日はベジミートのタコライス定食。うん、美味しかった。ご馳走さまでした。
 その足で、立川kino cinemaに向かい「銀平町シネマブルース」城定秀夫監督 いまおかしんじ脚本を観る。ずっと楽しみにしていた。映画が好きな人たちが沢山沢山出ていた。どの人もどの場面も忘れられない。
 私が好きだったのは、渡辺裕之さんと小出恵介さんがダンスを踊る場面。あれは劇場の皆が込み上げてくるものがあったのだと思う。皆すすり泣いていた。又、川に散骨するところで「またね」と言って別れを告げていた。「またね」この世からは居なくなってしまったとしても、またいつかどこかで会える。そんな風に思えた。川べりの陽の光と煌めきにまた涙が止まらなくなった。テントの中には沢山の映画のチラシ。沢山持って行っていたもんなあ。私の部屋とも重なって見えた。
 そして、映画の中の監督の演技の数々が最高だった。スクリーンの中で、生き生きと叫び怒り掴みかかっていた。躍動的で生命を感じた。何故だか笑顔になった。映画が終わった時にエンドロールを観てまた泣いた。全員光っていた。
 仕事で日々着ている自分の川越スカラ座のTシャツを思い出した。
 優しい優しい映画だった。カサブランカやサッチモの歌声、トランペットの音色がただただ耳に残った。
 そういえば、最後の10分位の時に、走って暗闇を掻き分けて座席に座ったおじさんが居た。不思議に思っていると、どうやら隣のスクリーンを観ていたようで、再び出ていった。なんだかスクリーンから出てきたようなおじさんだった。
 そんな土曜日。ありがとう。


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