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【AI漫画実験/第6回】AI漫画のネタ出しをLLM(大規模言語モデルAI)に手伝ってもらってみた

毎度お世話になっております、AI漫画界の生き恥こと野火城です。
これは「今までガチガチに手描きで漫画を描いてきた奴が、AIをフルに作って漫画を作るとどうなるか」という実験の記録・第6弾です。
前回+今までのAI漫画まとめ読みkindle(無料)はこちら。

SDXLでコントロールネットが使えるようになってきたので次はそれを試した記事を書こうと思っていたのですが、やはり時短の意味ではコントロールネットはまだDALL-E3のポン出し+加筆に敵わないので、今回はネタ出しをLLMに手伝ってもらった感想を書きます。



1.LLMと相談してネタを深める

花見シーズンなので、花見AI昔ばなし漫画でも作ろうかなと思い立ったのが3月30日土曜日の昼。サクっと作り上げて、出来れば休日中、3月31日の日曜日夜までには完成させたい。この時点で時間があまりありません。

花見ネタならベースは「花咲じいさん」がいいな、というのと、ぼんやりとこんな感じのネタにしたいなあ、というのはありましたが、細部が固まっていなかったので、LLMと相談しながらネタを固める事にしました。
まずはAIがどんなものを出してくるのか、「花咲じいさん」のあらすじを説明して、丸投げで改変を指定してみます。

いまいちです。テンプレートを繋ぎ合わせたみたいですね。
なのでこちらから下記のような無茶振りをします。あとLLMの種類を選択するの忘れてたので、今のところ物語を作るのに一番向いてるClaude-3-Opusに変更しました。

仮想通貨とかNFTとか好きだねAIくん…。
悪くないかもしれませんが、自分が詳しくない分野をいじるのは危険です。例えAI補助を使ったところで、知識がないものをいじるとネタとして浅くなり、こいつ知識ねえなとすぐバレます。己の体重のかかっていないネタを面白くするのは至難の業。「浅くいじる」が前提のちょいネタならいいんですが、物語の重要要素に絡めるのは難しいので、自分が詳しくないその辺は禁止ワードにしました。

意地悪爺さんがいつも安易にGPUを壊してしまうのにドラマを感じません。もっと真に迫った現実的な展開にしたいので、まずGPU交換の際のラッチの説明をClaude-3-Opusにさせて整合性を確認、それを展開に組み込んでもらいました。

意地悪爺さんがGPUを捨ててしまうまでは狙い通りですが、何回か書き直してもらっても、その後↓が面白くなりません。

安易だったり教訓的だったりで、お行儀が良い、いまいちつまらない展開になります。
そして意地悪爺さんのキャラがよくわかりません。この方は結局何がしたいんでしょうか。そんな簡単に諭される人なら爺さんになるほど年取る前に改心しているのでは。おじいさんとおばあさんも謎。本当に子供のように可愛がっていたGPU壊されたら、泣くだけでなくもっと怒るでしょう。復讐を考えた上で「復讐は…何も生まないッ…!」と己の右手を血が出るほど左手で握り、苦しみつつGPUを埋葬する、くらいのシーン挟まないと人間である説得力がないのでは。その上意地悪じいさんを哀れに思うとか、聖人過ぎて何考えてるのかわからず逆に怖いです。Claude-3-Opusは、全体的に漫画として一番大事な「キャラとしての人間みや行動原理」への理解が浅過ぎます。

もっとClaude-3-Opusに突っ込み入れて直してもらってもいいんですが、これ以上やり取りするのも時間かかって面倒ですし、あまりいい回答が期待できない。これ以降は自分で整える判断をし、結局最初の展開からほぼ自分で考え直しました。
現状のAIの性能では、最後に物を言うのは人力です。そしてAIの性能が上がったところで、AIが出してきた案を採用するかどうか「選択」するのは、少なくとも当分は人間の仕事でしょう。自分の審美眼や感性のアンテナを磨くしかない、と改めて思わされました。

この通り、LLMが出してきた物語をそのまま丸々使う事はありません。今のGPT4やClaude-3-Opusのレベルだと、人間側がよっぽど対話を頑張ったりプロンプトを工夫しないと、一見整合性が取れてるように見えるが人間の感情をおざなりにした、雰囲気だけのぼんやりした話が出来上がりがちです。
しかしLLMはネタの叩き台としては優秀です。あまりドンピシャな回答は出してきません、むしろ「駄目な回答」として優秀。こうやったら駄目なんだな、じゃあどうしたら面白くなるんだろう、と考えるきっかけをくれます。ネタを考える時の潤滑油として、とてもお勧めです。



2.Claude-3-Opusにラップを作ってもらう

漫画の途中でラップを入れる事にしたのですが、韻を踏んだ歌詞を考えるのは音楽素人の自分には難し過ぎます。ここに時間をかける猶予もありません。なのでLLMに丸投げする事にしました。
AIならきっと韻を踏むのも上手かろうと思ったのですが、全然踏めてなくて笑ってしまいました。

しかも自己評価が甘過ぎる。「でかい」と「出す」って韻踏めてるんだ。へえ…おもしれーAI…。
LLMの基本は英語です。日本語だから音がわからないのかも?という事で、ライムの簡単な説明をし、韻を踏む部分は英語にしてもらいました。

やはり英語指定した方が日本語の時より改善しました。
更にプロンプトを試行錯誤し何回か生成、時間も押してるので最終的には以下に決定。

今回LLMに手伝ってもらったのはここまでになります。

この歌詞も入れて、全23Pの「AI花咲かじいさん」ネームが完成しました。この時点で夜中0時半。制限時間あと丸1日もないのに白紙から23Pて…何でこんなに長くしたんだ…と思いつつ、まあAI漫画だし…とりあえず出来るとこまでやってみるか…と強行。


3.DALL-E3で画像を生成して当てはめて仕上げ


自分は高速でAI漫画を作る際、ネームに絵を入れません。構図を一つに確定させてしまうと、その構図をAIが上手く描けなかった時に躓くからと、いくらラフと言えどネームに絵を入れるのもそこそこ時間がかかるからです。個人的にはネームに絵を入れるのは「他人にネームの段階で見せて内容をわかってもらわなくてはいけない時」以外必要ないと思ってます。
なので、まず↓こういう、コマ割りとセリフのみのものを最終ページまで作り、同時にそこに入る絵を脳内で組み立てておきます。

こんな流れなので作り置きなどなく、1コマずつ順番に生成します。1コマ目が決まったら、1コマ目からの流れが自然に見えるように2コマ目を生成。これでも全然速度が出ました。特に今回の漫画は、あまり前後の整合性を気にしなくていいシーンが多く、AI漫画向きだったのもあります。

ネームが完成したのが31日の0時30分頃。その後しっかり8時間は寝て、最終的に計10時間ほどで出来ました。平均1ページ25分くらいですね。特急で作ったので画風やキャラ統一もできてませんし荒いですが、予定に間に合ったのでヨシ!


完成品はこちらです。kindle版の方は少し修正してますので見比べてみても面白いかも。


自分は仕事の余暇でAI実験をしてるんですが、手描きでは週末の休みだけで1日で23P描こうとも、こんなアホギャグをこんなにクオリティの高い絵で形にしようとも思わなかったです。同等の物を手描きで描こうとしたら、少なくとも2~3週間分の休日が丸々潰れます。
自分のAI漫画は、まさに画像AIがあるから実現できた産物だと言えます。やはりAIによる効率化は驚異的と言わざるを得ません。

今まで漫画を描きたいと思っても仕事で疲れて余裕がなかった人が、AIを使えば週末だけで漫画を作る事が可能になる。創作への挑戦の幅が広がる。
きっと今後、世の中に眠っている才能がAIによって発掘されていくのでしょう。
そんな世界が来るのが楽しみです。



現在の生成AIに全く問題がないとは思っていませんが、悪い部分だけでなく、良い面を実用でどう活かしていけるかも同時並行で検証したいです。専門的な技術を文章や図などの説明だけで理解するのは難しいですが、実際に触れると、感覚的に理解出来る事が多い。
生成AIは日々進化しており、最新技術についていくだけでかなり大変です。今AIが現実的にどこまで使えるようになっているかを調べる暇がない方も多いと思います。実際しっかり技術を追っている方は、技術検証だけで忙殺されてしまう勢いです。
幸か不幸か、自分は漫画しか出来ない&やりたいと思わないので、全てのAI技術を「漫画に活かせるか否か」で見ています。全て活かせているとは思ってませんが、実際にAI漫画を作る実験もしておりますので、漫画と親和性のありそうなAI技術についてはそこそこ把握しているつもりです。

この記事が、少しでも漫画制作におけるAI活用の可能性についての現状を知る参考になれば幸いです。


※普段はフリーでクリエイター系の仕事をしております。
2024年中盤辺りで今やっているメインの仕事が一息つくので、次の仕事を検討中です。AIを活用できる仕事にも興味があるので、お仕事の依頼がありましたらnoteの「お問い合わせ」もしくはnobisiro2023@gmail.comまでご連絡ください。よろしくお願いいたします。


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