ある夏の日に長崎へ帰り、実家の手伝いをしてみた。生姜畑の草刈りだ。父と2人で話すいい機会でもあったけど、暑さのあまり口数少なめだったのを覚えている。
父親は73歳。
「オレには定年がないなー」、という事を数年前に聞いた。農家には定年という制度はない事を、自ら揶揄するかのように言っていた。
自分が大人になり、子の親になってから、父と話す事がなかったので話してみたいと思っていた。
父が小さい頃のことや、祖父はどんな人だったのかとか聞いてみたけど、覚えていないのか話したくないのか、照れているのかはわからないが、期待したような昔話を引き出すことはできなかった。
でも、それが父らしいと言えば父らしい。
昔、叱られたり怒られたりした記憶もないし、悩んだ様子を見せたこともなく、いつもふざけた事を言って人を楽しませるのが、自分にとっての父らしいだった。
たまには父の日にいい事でもあると良いかなと思い、洒落たワインを送った。
「テンプラニーリョといえばスペイン、スペインといえばテンプラニーリョ」、とこしらえられた言葉を強めな口調でワイン素人の自分にマウントを取りにきた、ワイン売り場の女性店員が印象的だった。これはどうでもいいが。
感謝の気持ちを込めて、たまにはこういう事をしてみるのもいいものだ。
父らしいとは何かを考える、今日この頃。