デザイナーを伸ばす過程で大切にしたこと
1年目のデザイナーに教えたほうがいいことや、デザイナーを育てるとはどういうことなのか。
自分のことはどうにかなってきた20代中盤。「デザイナー育ててね」と突然言われても何から始めればいいのかもよく分からなかったですし、どうやってアドバイスしたらいいかも分からなかった当時、デザイナーの育成に関する記事があまりに少ない印象だったので、同じような境遇の方の役にたてば嬉しいです。
※この記事は、2017年4月にMediumで公開した記事を加筆・転載したものです。
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本人が課題を感じて初めて成長する
We don't know what we don't know.
(分からないことが分からない。)
突然ですが、他人に言われた時よりも自分で課題を認識できた方時の方が腹落ちしませんか?
教える側は、相手が分かっていないところが分かるのですが、当の本人は「分からないことが分からない」状態なのです。でも、それをそのまま教えても、分かった感触がないので、その場で理解できても根っこの部分で理解できないので、やらされた感じが残ったり、また同じことを繰り返したりします。
どれだけ教える側が一方的に課題感を感じて教えたとしても、一方通行では意味がないんですよね。逆に本人と課題感を共有できると、ゴールが明確になるので、お互いに成長実感を得やすいです。
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どうやって課題を共有するのか
まずはお願いする仕事を用意します。
バナーなど、単位の小さい仕事が良い(※2016年の事業会社の場合)です。バナーは情報設計の最小単位なので、いきなりLPやUIデザインをお願いしてしまうと、どこが分かっていて、どこが分からないのかが不明確になってしまいます。また、バナーのような商業デザインは、大学ではあまり教えてもらえませんし、「簡単に作れる」と思っている学生が多いというのもあり、最初の仕事としてはちょうど良いです。バナーでなくとも、
※2018年現在では、UIのトレースが話題となっていますが、これは業務でやるというよりかは、観察&発見の練習なので、仕事を通したトレーニングとしては、業務に結びついている実際の仕事がよいです。
仕事の内容については最低限伝えますが、期限は特にこちらから設定せず、自分で設定してもらいます。
・ 期限は自分で決めてもらう
・わからないことがあればいつでも質問してOK
という2点に関してのみ伝えます。
目的は、
・見積もった時間との誤差がどれぐらいあるか
・アウトプットに対してどれぐらい説明できるか
の2点です。
仕事の内容も最低限伝えて、分からない部分は質問してもらうようにしていました。理由は、質問して答えを引き出すのもデザイナーの重要なスキルだからです。
こういうプロセスを経て、「自分で決めたことでの失敗」を経験してもらったタイミングで、初めてフィードバックします。はじめに痛みを伴う失敗を経験すると、本人が課題感を得やすく、立ち上がりの成長がスムーズになります。
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どのようにフィードバックするか
最初は気になって色々なことを言いがちですが、結果相手の頭の上にはてなマークがたくさん浮かんでいるのを何度もみて、「失敗したなぁ…」と思い、なにごとも言い過ぎるのは良くないんだなと経験しました。
この、「色んなこと」には2点あり、
・量が多い
・粒度がばらばら
が問題なんだと感じたので、絞ることにしました。
1.フィードバックの量を絞る
例えば一度のフィードバックで10のことを伝えてしまうと、それがタスクリストになってしまい、それ以外のことに目を向けずらくなります。
なので、まずは本当に重要な2,3のポイントに絞って、自分で考える余地を作ります。被せるように質問がくるのですが、ぐっと我慢して、核心は答えず自分で考えてもらいます。
2.フィードバックの粒度を絞る
これは1点目ができればクリアできていると思います。
例えば、先に構図の話をした後に、トリミングやアイコンの形、そして文字詰めというようなディテールの話をすると、細かい話の方が残ってしまいます。本当は構図の話の方が重要にも関わらずです。
なので、細かいところが気になるのはすごく分かりますが、そこはぐっとこらえて、基本的な方向性として間違っていないかどうかをまずはフィードバックするようにします。
つまり、一つの仕事でぜんぶ指摘しようとせず、コアとなってる大きな問題から順番に一つずつ潰すようにします。
例えば、「クオリティが上がらない」のはどこに原因があるのかと考えた場合に、
クオリティが上がらない原因の例
→小:文字詰め、写真加工、エフェクトの使い方
→中:情報設計、レイアウト
→大:目的、誰に向けて作っているのか
という具合に、いくらシャドウの強さや文字詰めがどうのこうの伝えても、「どういう目的で、誰に向けて作っているのか」きちんと理解していなかったらクオリティはいつまでも上がらないので、その課題を解決できるようなフィードバックをする、という具合です。
コア課題を見つけるための考え方が分かりやすく書いてあるので、おすすめです。
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時には、言葉で伝えるより
自分で作ってみせることが重要
言うだけでは無くとにかく作ってみせることもデザイナーなら重要なことです。こうした方が良くなるんじゃないかと言うのを、実際目の前で修正案を作ってみます。
実際、リアルタイムで修正するケースというのはやりとりする中で多々あります。ミーティング中にその場で手直しして「こんな感じですかね?」と聞けるのか、一旦持ち帰らないといけないかで、スピードが全然違ってくるので、実際の現場を背中で見せて教えることはとても重要です。
また、スピードをあげるための細かなテクニックは、こういうタイミングだからこそ教えられることです。
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相談しやすい雰囲気を作る
半年後、1年後を踏まえたときに、レビューをする必要はあるものの、都度承認とったり、あれはダメこれはダメ、というような雰囲気になってしまうと、相談もしづらくなってしまい、新しいことにチャレンジしようという雰囲気自体がなくなってしまいます。新卒・中途にかかわらず、相談を受け付けてもらえる雰囲気・解決に繋がる雰囲気というのが大切です。
ですので、興味やトライしたそうなポイントを引っ張って伸ばします。本人が気がついていない場合もあるので、チャレンジを促すようにしていました。
・成長するには次に何が必要か
・この環境でどういうことが用意できるか
・本人は得意そうなことは何か
周囲にもあらかじめ「次にこういう仕事頼みたいなと思っていて」と相談しておけば、お願いしたい仕事も集まりやすいはずです。
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ミーティングは環境を変える
週に1回程度の振り返りミーティングをすることが多いのですが、何回もやっていると段々新鮮さがなくなってしまい、作業的なミーティングになってしまいます。
そこで、急に場所を変えて見たり、ふらっとコーヒーついでに話を聞いて見たり、話を聞くキッカケを増やすと良いです。
急に伝えると、PCもないですし、丸腰です。すると、普段考えていたこと・言いたかったことをしゃべりやすくなり、好評でした。
伝えるべきことはしっかり伝える
ただただ相談しやすくて、話しやすいだけではただの友達と一緒です。褒めるよりも厳しいことを言うことの方が、何倍もしんどいです。怒る(キレる)のではなく、叱らないといけないので、感情的にならずに伝えるべきことを伝えて、相手も「なぜダメで、どうすべきだったのか」きちんと理解してもらう必要があるからです。
その際に気をつけていたのは、以下の3点です。
1.その場で伝える
時間が経つと本人の記憶が薄れてしまって、突然「この間もやってたけど、そもそもさ」なんて言われてもピンときませんし、話を聞くのが嫌になります。必ずその場で言うようにしています。
2.伝える場所は選ぶ
他のメンバーの前で叱られると、内容よりも周りに聞かれていることの方に意識がいって、内容がきちんと伝わらないので、1対1になれる場所で伝えるようにします。その状況であれば、原因含めプラスアルファで話も聞くことができます。
3.あだ名でよばない
他のメンバーがどれだけあだ名で呼んでも、自分だけは意識的に呼ばないようにしました。厳しく言わざるを得ないタイミングで厳しいことを言うためです。メリハリ重要。
逆に、普段あだ名で呼ばれていたのにいきなり名前で呼ぶことで、「いつもと違う雰囲気」にして注目してもらうのも、ありだと思います。
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言語化する習慣を作る
プロのデザイナー(給料をもらってデザインをする人)としてチームで作るようになるため、アウトプットについて説明する機会が増えます。また、周囲もデザインを理解してくれる人に説明することと、企画職・エンジニアに対して説明することでは、まったく異なります。
これは1年目だけではなく、2年目以降もずっと向き合うことなので、早めにデザインを言語化する習慣をつけると、のちのち幸せです。
話せるというソフトスキルについて情報発信している理由
www.yasuhisa.com
デザイナーの仕事は「作れる」だけでなく「話せる」ことも含まれています。しかし、デザイナーが自分のデザインを言語化できない人があまりにも多いと思います。
逆に言えば、言語化できるだけで多くのデザイナーを追い抜けるということでもあります。言語化だけに限りませんが、一日で習得するのは難しいどこの環境でも通用するソフトスキルこそ大切なので、その重要性をこれからも伝えていくといいのではないでしょうか。
その取っ掛かりとして、「新卒自身が考えていること・悩んでいること」や「どういうプロセスでアウトプットしたか」といった身近な部分を、新卒と一緒に考えましょう。一日で習得が難しいことは、習慣付けすることが大切だと思います。
ここまで言っておいて最後は、新卒本人の気持ち次第なのかもしれません。ただ、自分に当てはめてみると、社会人になって一人で生きてこれたとはとても思えませんし、むしろ「今でも覚えている先輩からの言葉」は少なくありません。
そう言った意味で「新卒本人の気持ち次第」というのは、何が響くかは本人次第で、最後は自分自身で気がついてもらうしかない。
そのためにメンターができることは、「正面から向き合って本気で考えること」、それに尽きるのではないでしょうか。
元記事:デザイナーの育成で大切にしたこと|NOBUOSUZUKI - Medium
by @nobgraphica
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