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『荒潮』陳楸帆(著)中原尚哉(訳)
彼女の名前は米米(ミーミー)。中国南東部のシリコン島で日々、電子ゴミから資源を探し出して暮らす最下層市民“ゴミ人”だ。彼女たちは昼夜なく厳しい労働を強いられ、稼ぎは何代にもわたって島を支配してきた羅、陳、林の有力御三家に吸い取られていた。しかし、テラグリーン・リサイクリング社の経営コンサルタント、ブランドルと陳開宗が島を訪れてからすべては変わり始める。テラグリーン社の環境再生計画に翻弄され、利権を奪い合う御三家たち。いっぽう、米米は開宗と恋に落ちるが、想像し得ない未来が彼女を待ち受けていた……『三体』の劉慈欣が激賞した、中国SFの超新星によるデビュー長篇。
サイバーパンクでボーイ・ミーツ・ガール! ラピュタ、AKIRA、攻殻機動隊、メトロポリス、いろんな傑作の良いところをミックスしたようなエンタメ作品。アニメで観たいなぁ。でも主人公開宗がディルドで拘束されるから無理かな(笑)
近未来、中国の都市鉱山シリコン島。その劣悪な環境問題を解決するため、アメリカのリサイクル企業が乗り込んでくる。しかし難航する御三家との交渉、ゴミ人の少女米米と通訳の開宗の出会い、といった感じでお話が進むのだが、米米がバイオ廃棄物と知らずにゴミに触れ、ウイルスに侵されてしまい…。と話が小気味よく転がってゆく。
SFとして突出したものは無いが、中国共産党体制や仏教要素が入ってくるのでユニークな世界観に仕上がっている。様々な理由から米米が追われ続け、ハラハラ・ドキドキ、時にはバトル、そして嵐の中でクライマックス。読者を飽きさせない。エンタメとして高レベル。
島を支配する羅一族のかかえるチンピラ軍団が暴力装置として秀逸。B級感が漂うけど、敵として実にわかりやすかった。しかしそれ以外の勢力が多いので、覚えながら読むのがちょっと大変。なぜこの展開になっているのか、という説明がもうちょっと欲しいかな。
ちなみに、陳楸帆は『月の光』の短編も仏教テイストが最高だったのでおすすめ。