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『ささやきの島』フランシス・ハーディング(著)エミリー・グラヴェット(挿絵)児玉敦子(訳)
マイロの父は死者の魂を船に乗せて送り届ける渡し守をしていた。島の住人は死者が出るとその靴を渡し守のところにもっていく。そうしないと死者が島じゅうをさまよい歩いてしまうのだ。ある日領主の娘が亡くなった。ところが領主は娘の死を受けいれず、渡し守から靴を取りもどし、魔術師の闇のまじないで娘をよみがえらせようとする。マイロの父は領主の手の者に殺されてしまい、このままでは島じゅうに死者が放たれる! 怖がりのマイロはなんとか父のかわりに船を出すが……。
ハーディングの新作が薄い! 左開き! 絵本! と驚きの連続だが、お話はいつものハーディング。心温まるホラーファンタジーでした。
挿絵が静謐で、美しさと残酷さが際立ってたのも素晴らしい。鳥の使い魔、普通にビビったよ。
お話は、死者の靴を壊れた塔の島まで運ぶ渡し守の話。
領主の娘が死に、魔術で復活させたい父が渡し守の仕事を妨害、この仕事にむいてない、と言われていた息子が舟を出すしかなくなり…。
少年の冒険、成長譚だが、冒頭からの悲劇や魔術師の邪悪さが強烈なので、さすがハーディングと唸る。
カテゴリはYAだが、トラウマレベルでは、とちょっと心配になる。
狂った領主も不憫でたまらない。そしてそれを利用してる魔術師にどんどんヘイトが高まってゆく…。思い出すだけで怒りが湧いてくるゲスさ。
この魔術師、ハーディング史上一番人の心が無いかも。
1時間ちょっとで読める短編だが、幽霊が叫ぶシーンで、”息をつぐ必要がないので、いつまでもいつまでもつづいた。”とか表現が流石過ぎて大好き。
でもハーディングはこってりした長編を徹夜で読みたいんだよ! 長編をおくれよ!