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『ふたりジャネット』テリー・ビッスン(著)中村融(訳)
短編の名手ビッスンが贈る、ポップに洗練されたファンタジー! ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作「熊が火を発見する」、抜群の面白さ<万能中国人ウィルスン・ウー>シリーズなど、表題作他全9編を収録した、日本初の短編集。
SFというより、ほら話という方がしっくり来る。やさしくてユーモアたっぷりで荒唐無稽。子供の頃、絵本を読んで寝かしつけてもらった時のような幸福な気持ちになった一冊。
アンディ・ウィアーが近いかな。科学を取っ払ってユーモアを(さらに)追加した感じ。
以下個別感想。
熊が火を発見する
熊が火を発見し冬眠しなくなり、人間はタイヤのパンクを修理するお話。
ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作ということで、どんな凄いSFなんだ! と気合を入れて読んだので、拍子抜けしてしまった。しかし2周目では可笑しくてたまらない。
古き良きアメリカの風景と、奈良公園の鹿並に野生を失った熊が実によくマッチしている。その熊が松明を掲げているのだから微笑むしかない。
アンを押してください
ATMが意思を持つお話。
「コント、ATM」とTVから流れてきても何ら違和感なし。八方丸く収まるオチがキュート。
未来からきたふたり組
未来で失われた美術品を保護すべく未来人が画廊にやってくるお話。
オチの意味がいまいちわからず残念。しかし文章がユーモア満載なのでそれだけで楽しい。天丼(ネタをくりかえす手法)はアメリカにもあるんだなぁ、と感心した。
2周目でオチを理解。時空がゆる過ぎて笑える。でもアイ・ラブ・ルーシーは見たことないんだよね…。
英国航行中
ブリテン島が外洋に動き出すお話。
(そんな描写は無いが)アイルランド人が泣きながら万歳する様子が目に浮かぶ。どの島がついてきてどれが付いてきてないなど政治ネタが面白い。「使えないオヤジ」と言う辛辣な少女はなにか意味あったのだろうか? 読み取れず残念。でもいい歳してその少女にビビって避ける主人公は笑える。
ふたりジャネット
アメリカ文学界の名士達が南部の田舎に続々と引っ越してくるお話。
表題作だが、アメリカ文学オタク以外全然楽しめないと思われ。同名のジャネットの意味もよくわからず。
冥界飛行士
死後の世界のお話。
珍しく暗い。オチもなし。これは作者の死後の世界観なんだろうか? キリスト教的じゃないのは興味深い。しかし仏教もイスラム教でもそうだが、死んだ後にも別世界(たとえ地獄でも)があり、人生(意識)が続いていく、という思想が多い。いかに死にたくないかがよく分かる。個人的には、TVのスイッチ切ったらどうなると思う? と同レベルの問題だと思うのだけど。
穴の中の穴 宇宙のはずれ 時間どおりに教会へ
<万能中国人ウィルスン・ウー>シリーズ3部作。最高に笑える。なんでも出来る謎中国人ウーがドラえもんポジションで面白いのだが、のび太ポジションの主人公の間抜けさも相当面白い。
どの話もかなり笑えるけど、『穴の中の穴』が一番好き。ふとしたきっかけで月面とつながってしまったスクラップ置き場でのお話で、ビニール袋1枚かぶって月面に歩いていく描写は腹抱えて笑った。そして珍しくウーのせいでトラブルに巻き込まれるのもウーのキャラが立って良い。
後書きによると、ウー三部作がまとまったのはこれが初めてとの事で信じられない気持ち。