『夜の人々』エドワード・アンダースン(著)矢口誠(訳)
最初期のノワールモノの傑作。すでに完成形だよ。
積み重なる悪事、愛の逃避行、仲間と恋人の板挟み等々、逃げ切れるのか、堅気になれるのか、最後までヒヤヒヤの連続。そしてせつなすぎるラスト。最後の最後に明かされる真相に脱帽。言う事無し。
お話は脱走シーンから始まり、主人公と仲間二人が、仲間の親戚をたよりに逃亡してゆく。しかしこいつら、大人しく潜伏などせず、金が無いからと銀行を襲うような悪人。殺人も辞さない。
その逃避行中、主人公は仲間の親戚である少女キーチーとであい、惹かれてゆく。彼女は二人で田舎に引っ越して静かに暮らそうというが…。
この3人、微妙に憎めないのが良い。クズには違いないのだが、邪悪ではないし、気の良い奴らで、読んでてほんわかする。それだけに、犯罪せずには生きられなかった環境が悔やまれる。
そしてこの作品、本当に最初からドキドキが延々続く。最初の脱獄からして、仲間二人は主人公を見捨てるのでは? と微妙に信頼できない。その後も銀行強盗はちゃんと成功するのか、町で話しかけて来た警官をやり過ごせるのか、仲間の親戚は信頼できるのか等々ずっと続く。
さらにキーチーと出会ってからは、彼女と二人で幸せに暮らせる可能性もでてきて、より一層捕まる恐怖が高まる。
とはいえ、今は2024年。ノワールもののラストは予想がついてる。それだけに余計読んでて辛いのだが、ページをめくる手を止められない。
終盤、キーチーをとるか、仲間をとるかの二択で、主人公の選択にアホ! バカ! と嘆きつつも、意外な展開で喝采を送るも、あのラスト…。その真相…。全てに納得できるが、ため息しか出ない。そこらのミステリより断然良い。
『はなればなれに』がここ最近のノワールもの1位だったが、本作の勝利。
本書、2回映画化してるそうで、Youtubeにあった。2作目は、先日亡くなったシェリー・デュヴァルがキーチー役でしんみりしちゃった。
しかしなんという超ネタバレ予告(笑) さらに2作ともラスト改変しちゃってて、わかってねーなという感じ。変えたい気持ちはわかるが、変えちゃいかんのよ。それこそがキーチーの本望だから。