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『夜の人々』エドワード・アンダースン(著)矢口誠(訳)

強盗未遂で殺人を犯してしまい14歳で終身刑となった青年ボウイは、囚人仲間Tダブ、チカモウとともにアルカトナ刑務所を脱獄する。チカモウの従兄ディーのもとへと向かいながらも、さっそく銀行強盗を計画し、3人組はさらに犯罪を重ねていく。逃亡先のディーの家にはキーチーという娘がいて、ボウイと彼女は互いに惹かれ合っていった。犯行の合間のある日、ボウイが自動車事故を起こし、後続車に乗っていたチカモウが警官二人を射殺してしまう。さらに現場に残された指紋からボウイは主犯と報じられ、殺人犯として追われることに――。
ジョン・スタインベックを彷彿とさせる文学性溢れる作品世界。レイモンド・チャンドラーも激賞した、ノワール小説の原点とも言うべき1937年発表の幻の名作が、ついにヴェールを脱ぐ。

最初期のノワールモノの傑作。すでに完成形だよ。
積み重なる悪事、愛の逃避行、仲間と恋人の板挟み等々、逃げ切れるのか、堅気になれるのか、最後までヒヤヒヤの連続。そしてせつなすぎるラスト。最後の最後に明かされる真相に脱帽。言う事無し。

お話は脱走シーンから始まり、主人公と仲間二人が、仲間の親戚をたよりに逃亡してゆく。しかしこいつら、大人しく潜伏などせず、金が無いからと銀行を襲うような悪人。殺人も辞さない。
その逃避行中、主人公は仲間の親戚である少女キーチーとであい、惹かれてゆく。彼女は二人で田舎に引っ越して静かに暮らそうというが…。

この3人、微妙に憎めないのが良い。クズには違いないのだが、邪悪ではないし、気の良い奴らで、読んでてほんわかする。それだけに、犯罪せずには生きられなかった環境が悔やまれる。

そしてこの作品、本当に最初からドキドキが延々続く。最初の脱獄からして、仲間二人は主人公を見捨てるのでは? と微妙に信頼できない。その後も銀行強盗はちゃんと成功するのか、町で話しかけて来た警官をやり過ごせるのか、仲間の親戚は信頼できるのか等々ずっと続く。
さらにキーチーと出会ってからは、彼女と二人で幸せに暮らせる可能性もでてきて、より一層捕まる恐怖が高まる。

とはいえ、今は2024年。ノワールもののラストは予想がついてる。それだけに余計読んでて辛いのだが、ページをめくる手を止められない。

終盤、キーチーをとるか、仲間をとるかの二択で、主人公の選択にアホ! バカ! と嘆きつつも、意外な展開で喝采を送るも、あのラスト…。その真相…。全てに納得できるが、ため息しか出ない。そこらのミステリより断然良い。

『はなればなれに』がここ最近のノワールもの1位だったが、本作の勝利。

本書、2回映画化してるそうで、Youtubeにあった。2作目は、先日亡くなったシェリー・デュヴァルがキーチー役でしんみりしちゃった。
しかしなんという超ネタバレ予告(笑) さらに2作ともラスト改変しちゃってて、わかってねーなという感じ。変えたい気持ちはわかるが、変えちゃいかんのよ。それこそがキーチーの本望だから。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #海外小説 #ノワール

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