『恐怖を失った男』M・W・クレイヴン(著)山中朝晶(訳)
さすがクレイヴン、すさまじいページタナーっぷりで徹夜してしまった。絶妙な焦らし、引き伸ばし、蘊蓄、とどめの引き、これが短いサイクルで延々繰り返されるので、本当に本が置けなかった。お見事。
お話は、なぜか逃亡中の主人公が捕まるところから始まり(ジョーズの蘊蓄から始まる)、かつての上司から誘拐された娘を探してくれ、と頼まれ、この捜査と、主人公が今に至る経緯、それぞれの情報が小出しにされてゆく。
『ワシントン・ポー』シリーズとちがってティリーがいないが、大丈夫か? と思ってたが杞憂。普通に面白い。展開は全然予想できないし、ドキドキが延々つづく。
主人公がやるのは地道な聞き込み調査なのだが、とにかくトラブる。そして襲われてて面白い。恐怖を感じないだけあって、淡々とやるべきことをやるのだが、運で死んでないだけなパターンが何度もある。しかし、やるべきことをやってるからこそ助かるんだよなぁと考えさせられる。
終盤、敵がなにをやってるのか全部描写されてるのに、それが何のためなのか、全くわからなくてちょっと感動した。そんなテクノロジーがあるとは。
ただ、主人公のキャラがちょっと残念。テクノロジーに疎かったり、立派な家に住んでたり、蘊蓄大好きだったりと、ポーとかなりかぶる。
恐怖を感じない、という設定もさほど生きてない。ハードボイルドモノの主人公はたいていこんな感じだしね。
超法規的ダークヒーローとして、もうちょっとなにかあると嬉しいのにな。
また、本作も蘊蓄てんこもりで、バーのナッツの話がここでもでてきて笑った。以下、びっくりしたやつメモ。
D.Cは街中に銃声探知機が設置されてる
アメリカには民間の刑務所がある
英語にはツで始まる単語がない
グロックは安全装置がついてない
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?