『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』チャールズ・ユウ(著)円城塔(訳)
「僕」はタイムマシンの修理とサポートを担当する技術者で、個人用タイムマシンに乗って時間のはざまを漂っている。電話ボックス大の空間で暮らす僕にとって、UIのタミーと非実在犬のエドはかけがえのない存在だ。家族は父と母の三人だけど、母は同じ時間を繰り返すループ・サービスに入ったきりだし、ガレージでタイムマシン開発をしていた父は失踪中で、時空のどこにいるのか不明だ。あるとき、修理工場でタイムマシンから僕が降りてくるのを目撃した僕は、とっさに「もうひとりの自分」を撃ってしまった!?最悪のパラドックスに陥った僕は…。アメリカ小説界注目の俊英の家族小説を、円城塔の翻訳で贈る。
理系の西尾維新みたいな語り口。一つの言葉を別の言葉で何度も繰り返す。それが理系専門用語や造語なので、そういうのが好きな人じゃないと読むのが辛い。辛かった。
「1週間の労働とは(中略)時間を貫き揺り籠から墓場までを結ぶ最短経路だった。」など、好きな言い回しも多いので痛し痒し。
お話は、SFが現実の宇宙で、タイムマシン修理者の主人公が時空の狭間に引きこもり、陰鬱な家族の思い出話をしてる、というものだが、結局は、引きこもってないで一歩踏み出せ、と言っているだけだった。長々グチグチ語られる。
かなりとっつきにくいが、三分の一を超えたあたりで世界観がなんとなく掴めると楽しくなってくる。しかしその後、未来の自分と遭遇してからが今ひとつ。何ぞ盛り上がってゆくのかと思ったら、鬱展開。TV版エヴァ最終回みたいな気分になる。
せっかくデス・スターも実在するおもしろSF世界なのに、それが小道具にしかなってないのがもったいない。
この本は、円城塔の文章を楽しめるかどうか、それにかかってる。