イミテーション②
学校帰り、約束通り私は心美とスタバに向かった。
「さとは、今日はあたしがおごったげる!」
「え?ほんと?それは嬉しい。いいの?」
「もちろん!バイトでたまったお金だし。」
心美は飲食店でアルバイトをしていた。
「どう?アルバイトは?」
「楽しいよ。先輩の人とかもめっちゃ優しいし、なによりまかないがおいしいんだよねー。」
「えぇーいいなー。まかない?焼き肉店だったよね?」
「そうそう、昨日のあの牛肉丼の味と言ったらもう言葉で表せんわ。やば、思い出しただけでおなかすいてきたー」
アルバイトか。私も何か始めよっかな?
スタバに着くと心美はキャラメルフラペチーノを頼んだ。私はいつもの抹茶クリームフラペチーノを頼んだ。これが一番おいしい。
「さとは最近バスケ部来てないでしょ?大丈夫?」
——私と心美は同じバスケ部に所属していた。心美は熱心に参加していたが、私は途中から周りとの温度差を感じ、日に日に行く頻度を落としていき、最近ではもはや幽霊部員同然になってしまった。
「いやー授業終わった後、なんか疲れちゃってさ。で、体に力はいらなくって家に直行しちゃうんだよね」
私はそれとなく答える。
「なんかあった?なんでも相談にのるよ?」
心美は本当に優しい。こうしてすぐに寄り添ってくれる。いい友達をもったと心美と話すたびに思う。
「なんか無気力って感じなんだよねー。最近学校休んじゃうのもそれが原因。朝起きられない。」
「わかる」
「あとさ。飽きてきたんだよね」
「授業とか?部活とかが?」
「んーそれもそうなんだけど、全部。かな。日常に飽きてきた。みたいな」
心美はドリンクを飲んでから言う。
「前から思ってたけどさ。さとはってなんかかっこいいよね」
「え?どこが?」
「なんかクールっていうか、一歩引いて見てる感じ。さとはのそうゆうとこ好きよ」
「こんなにひねくれてるのに?」
やっぱり心美と話すのは楽しい。自然と笑える。心美は数少ない本当に気の合う友達。大切にしなきゃと毎回思う。
それから私たちは夢中になっておしゃべりしていた。日が暮れるまでしゃべり続けたとき、もうすぐ閉店時間となっていた。
店員はきっとこいつらいつまでいるんだよ。と思っていたに違いない。
私は心美と途中まで一緒に帰った。
今日はいい日。何にもない日に比べたら幾分かましだった。これでいい。
これでいい。