短歌おきば 2021-04

久方の月やいづれの昔より宿りそめけむ花あふぐ眼

春も春しかぞ山吹ふく風に八重波立つるその八重咲きを

花にほふ藤の棚雲深ければわきてうき世に蔭ぞたのまむ

誰か植ゑ今し咲くらむ世々かけてゆかりの色ににほふ藤波

深き夜を春ぞ駆くなる梓弓おして降りしく雨の爪音

むらさきの春の横雲こぼれては露おきまよふ藤の朝庭

世の中は空のはたてを消えがてに尾の上さびしき入相の雲

はるさめの雲は夜風にはれそめて月のかげ散る藤波の露

夢のうちに春や暮れけむ咲くと見し花はなごりの遠方の鐘

つつじ咲く道はひとまにうちしめり春の色添ふゆふぐれの雨

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