短歌おきば 2021-09
夏の尾のけしきを洗ふ夜の雨にそそや涼しきやどの秋風
秋の雨の小止む池辺のはなれ松染めぬ梢も露ぞうつろふ
風よわみなほ虫の音は遥かにて月なき夜の星のさやけさ
朝明けやいづくの秋を吹き越して風は桂花の香ににほふらむ
晴れそむる雨の桂花に影さして露さへにほふ夕映えの色
秋ごとに身はふりぬれど曼珠沙華あかぬ色にぞ咲きまさりける
秋の野やうき世をよそにあくがれて千代も寝なまし彼岸花咲く
天つ風立つや衣の雲過ぎて夜澄みわたる秋の月影
紅の秋ひと葉づつおほかたの緑にしるき櫨のむら染
風触るる秋のねざめの雲ふけて月や昔の面影の袖