短歌おきば 2021-08
行きくれて結びもあへぬ夏草のあだこと繁きよにぞ砕くる
夕日影のこる梢になく蟬の声ぞうつろふ杜の初風
雨晴れて秋めぐるなり吹く風も虫の鳴く音も色は見えねど
法師ぜみ峰の入日に声満ちて四方染めいづる夕雲の空
虫の音のたえて夜深き天の海に猶散りまさる星影の浪
吹きかはる野辺の葉ずゑに秋かけて入日落ちたり蜩の声
雨かかる秋のまがきの朝顔のあしたの花よあきらけくこそ
むなしさのはて越えてゆけうつせみのなく音に暮るる秋のうき雲
ひぐらしのritardandoに入日尽きて松風うごくみ山辺の里
去る夏を惜しみがほにて吹く風もかたへや秋に末葉よすらむ
秋風はいづち吹くらむ染めやらぬ里の下葉に夏を残して
末さわぐ秋の葉風のさびしさによるよる何を松虫の声