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論理の言葉・“ならば”と“または” (T3:Pt1:Ch06)
混乱しますよね(´・ω・`)
ひとつひとつ丁寧に解きほぐして論理の言葉と仲良くなりましょう
前振り
togetter「大昔、ある模試で「PまたはQを示せ」という問題に「Pでない ならばQ」と完璧な証明をしたが、減点されていた話」から。
「確かにこのふたつの論理の言葉:『PならばQ』と『Pでないか、またはQ』が 同じ意味 というのは、混乱を誘うよな」と思ったので、記事にしてみることにしました。
なお、本記事は「『PならばQ』と『Pでないか、またはQ』の関係」のみ取り上げるもので、上記まとめの内容には言及しません。
“ならば”と“または”が同値であるということ
「PならばQ」と「Pでないか、またはQ」が同値であることは、真理値表で確かめることができます。(真理値表は、真理表とも呼ばれます)
“ならば”の真理値表はFig.01のようになります(なぜそうなるのかの説明はここでは割愛)。
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“Pでないか、またはQ”の真理値表がFig.02。表の中、ピンクの線で囲った部分です。
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真理値が同じであり、「PならばQ」と「Pでないか、またはQ」は論理的に同値」です。
そう言われても (´・ω・`)? となる。わかります( ˘ω˘ )
そこで、具体例で
考えてみましょう。
トランプ(プレイングカード)一式からある条件で抜き出したカードの山があるとします。
条件とは、「スートの色が黒ならば、表は絵札である」
この山が本当にこの条件を満たしているのか確かめようとしています。
「スートの色が黒」をP、「絵札である」をQで表します。
この山から適当にカードを抜いて……
スートがスペードかクラブで絵札 ……条件に合っている
Pが真で、Qが真 = NOT(P)が偽で、Qが真。
Fig.01の1行目、Fig.02の1行目に該当スペードかクラブで数字札 ……条件に合っていない
Pが真で、Qが偽 = NOT(P)が偽で、Qが偽。
Fig.01の3行目、Fig.02の3行目に該当ハートかダイヤモンドで、絵札 ……条件に合っている
Pが偽で、Qが真 = NOT(P)が真で、Qが真。
Fig.01の2行目、Fig.02の2行目に該当ハートかダイヤモンドで、数字札 ……条件に合っている
Pが偽で、Qが偽 = NOT(P)が真で、Qが偽。
Fig.01の4行目、Fig.02の4行目に該当
「『PならばQ』と『Pでないか、またはQ』は論理的に同値」ということが判ります。
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言葉の働きを考える
PならばQ
“PならばQ”は、「Pが真(成り立つ)なら、Qは真だ(成り立つ)よ」ということを言っています。
スートの色が黒である(Pが真)。その時、絵札(Qが真)なら“PならばQ”は真です。
数字札(Qが偽)なら、“PならばQ”は偽です。
“PならばQ”は、Pが偽の場合(スートの色が赤の場合)のことは 何も言っていません。
スートの色が赤なら、札の種類に関係なく(絵札でも数字札でも)条件に合っていることになります。(そう考えることにしてある)
Pでないか、またはQ
“Pでないか、またはQ”は、「Pが偽(=Pの否定が真)か、Qが真か、どちらかは真だよ」ということを言っています。どちらかが真なら、それで全体が真と決まります(なお、両方とも真である場合もありです)。
スートの色が黒である(Pが真=Pの否定が偽)。その時、絵札(Qが真)なら“Pでないか、またはQ”は真です。
数字札(Qが偽)なら、“Pでないか、またはQ”は偽です。
スートが赤(Pが偽=Pの否定が真)なら、札の種類を見る必要なく“Pでないか、またはQ”は真です。
“Pでないか、またはQ”の後半「またはQ」は、Pが真(=Pの否定が偽)の時に確かめられるべきことを指しています。
前半の「Pでないか」は、Pが偽(=Pの否定が真)ならそこで(Qの真偽を確かめる必要なく)全体が真に決まることを指しています。
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なお
冒頭のtogetterまとめの元ポスト(ツイート)は、Pを「NOT(P)」に置き換えた、
「NOT(NOT(P))か、またはQ 」=「Pか、またはQ」 ⇔ NOT(P)ならばQ
という形の話になっています。
余談
同まとめの中に、こんなポスト(ツイート)がありました。
20年前なら、もうすでに命題論理に疎い採点者、確かにいたぬ。
正直理系を自称している人でも、数学的な「または」を理解してない人が結構いるんじゃないかって気はしてます。
個人の感想でしょうから、どれだけ一般化できることなのか筆者には判りかねますが、
えー( ´゚д゚`)エー そういうものなのかー(´・ω・`)
という感じで、なんか残念です。
命題論理の基礎の基礎を押さえておきたい人には、Sqriptsの論理スキルの連載、おすすめです(宣伝)。
(2025-02-27 R001)