危機は幻想の終わり ――ワインバーグの一般システム法則 (T1:Pt0:Ch00)(本文無料)
G.M.ワインバーグの一般システム法則を取り上げるエッセイです
「有料記事」と表示されますが、おまけ800文字程度だけで、本文は無料で読めます
ロンダの悟り第一番
「危機は幻想の終わり」は、ワインバーグが唱えた数ある一般システム法則の中でも筆者にとりわけ印象深いもののひとつで、
『コンサルタントの秘密』で「ロンダの悟り第一番」として挙げられています。
いま原本をすぐに引っ張り出せない状態なのでウィキペディア日本語版からのコピペになりますが、「原形」はこうです。
原本を思い出しながら解説を加えると:
出典『コンサルタントの秘密』(以降、『秘密』『コンみつ』と略記)では、著者がこの一般システム法則を導き出すエピソードが綴られています。
ぜひ『コンみつ』原本を買って読んでみてください(参考文献参照)。「人にアドバイスを与える」「人からアドバイスを受ける」ことに関するアドバイス(!)を中心に、人と協働するためのヒントに溢れた良書です。
危機は幻想の終わり
私たちは、私生活でも仕事でも、現在の状態や現在進行形の出来事を踏まえて、未来の状態について何かしらの予測や見通しを抱いています。
典型的には、「現在のよい状態は、多少の起伏はあってもずっと続くだろう」「現状を維持していれば、やがて状態は上向くだろう」「まずまずの形で終息に向かうだろう」というような。
そこに思ってもみなかった出来事や事態が出来して、現在の状態を攪乱したり現在進行形の出来事に干渉したりすることがあります。
危機 です。
危機 が到来すると、人は足元の床や地面が崩れるような思いに襲われたり、心臓がきゅっと摑まれるように感じたり、眼前が不安と焦燥と恐怖で覆われたように感じたりします。
危機の“大きさ”によっては人生の終わり、この世の終わりのような気分に陥ることもあるでしょう。
…………
しかし、よくよく考えてみると、「未来の状態について抱いていた何かしらの予測や見通し」には大した根拠がない場合が多いことに気づきます。
現在の状態から単純に線形に推測しているだけだったり、希望的観測 だったり。
「思ってもみなかった」は 自分が思っていなかっただけ だったり。
そして、危機 のせいで本当に人生や世界は終わるのだろうかと考えてみると、案外そうでもなかったりする(「本当の危機」もありますが)。
つまり「未来の予測や見通し」の多くは当人にとって都合のよい 幻想 であり、危機を感じるのはその幻想が破れたことを示しているに過ぎません。
危機 の多くは 突然 やって来ますが、大した根拠のない見通しが思いがけない一撃で崩れるのも当然です。
そんな時には、ともかく自分が何についてどんな 幻想 を抱いていたのか振り返り、その 幻想 と 目の前の現状との差異を受け止めるのが大事です。
それだけでも波立っていた心が落ち着くものですし、そのような「大した根拠もなく未来について何かしらの予測や見通しを抱いていた」ことがその 危機 の“原因”なのだと気づいたりします。
(そこまで行ければ、感情的な混乱を鎮めたり、生じた事態を解消するための対処を考えたりする準備は整っているでしょう)
(甘い見通しを抱いていた自分を呪ったり、後悔のほぞを噛みしめたりといったことは、別のテーマ)
一般システム法則(として記述されること)のメリット
……こんな風に説明されれば、ああそうだなと頷く人は多いでしょう。
でも、言われるまではそんなことを思いもしなかった人も多いでしょう。
これを「危機は幻想の終わり」という呪文にしておくことで(先述のように、原形はもうちょっと長いですが)、この呪文を唱えればいつでも、自分が都合のいい幻想に囚われていないか気をつける役に立ちます。
かつて危機に陥ったことを忘れてしまっても、危機に見舞われた覚えのない人でも。
また、実際に危機が訪れた時、浮足立つことなく、「これは自分の見通しの甘さが露呈しただけ、現状を正確に把握する努力を怠ったのが明るみに出ただけなんじゃないか」と冷静を取り戻して状況を振り返る役にも立ちます。
(本当に危機である場合もあるので、原形は周到な表現になっています)
筆者の経験では、この法則を覚えたからといって 危機 がなくなることはありません。相変わらず「大した根拠もない予測や見通し」を抱いて、それに気づかずにいることも多いです。
が、未来の状態について予測や見通しについてはちょっぴり注意深くなれたような気がしています。
むすび
しばらくこの「個別の一般システム法則を紹介」という形を続けてみようと思います。
(ワインバーグ著作紹介シリーズ、再開せねばな……(; ・`д・´))
参考文献
[1] G.M.ワインバーグ(著), 木村泉(訳), 『コンサルタントの秘密――技術アドバイスの人間学』 共立出版 1990
(2025-01-06 R001)
以上で本文は終わりです。閲読ありがとうございました。
以降は、今回の一般システム法則にまつわる筆者の思い出や感想、「自分ごと」です。
エッセイの主旨からはなくても理解には何ら差し支えない文であることと、進んでお目にかけたい話でもないことから、試みに、興味のある方限定という形にしてみました。
返金可能な設定にしています(ハズ)。ご安心ください。
(ヤバい話はまったく出てきません。その点でも安心です!)
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