小寺の論壇:今だからこそ、エスカレーター片側空けを考える
3月末の話になるが、埼玉県でエスカレーターに立ち止まって乗ることを求める条例が可決・成立した。条例では、エスカレーターの利用者に立ち止まって乗ることを求めるほか、エスカレーターの管理者に利用者への周知を求めたうえで、知事は周知が不十分な管理者に指導や助言、勧告ができる。ただし罰則はない。条例をもってこのようなルールを規定したのは、全国でも初めてとみられる。
・エスカレーター “立ち止まって利用を” 埼玉県で条例成立(NHKニュース)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210326/k10012937541000.html
いわゆる「エスカレーターの片側空け問題」は、移動の効率化を優先する推進派と、安全性を重視する禁止派の間でもう何年も議論が続いている。管理者側は安全を優先するために禁止したい方針でポスター掲示や呼びかけ等も行ってきたが、効果はなかった。逆にエスカレーター乗り待ちでホームに人が溜まる方が危険だろうという珍説まで飛び出して、混迷を極めている。
この片側空け、関東では右空け、関西では左空けというのが定着している。ではそれ以外の地方はどうかというと、ここ宮崎ではどちらも空けない。つまり、みんな止まって乗っている。
片側明けが必要なエスカレータとは、主に交通機関と接続しているものだ。3〜5分おきに到着する電車に1本でも早く乗りたいという人のために、歩く通路を確保するというものである。
ところが車社会である地方の場合は、急いで電車に乗らなければならないようなニーズがなく、エスカレータの活躍場所はほぼ商業施設内に限られる。そこでは急いで売り場に行かなければ死んでしまう人などおらず、急ぐ人のために片側を空ける必然性がないのである。
埼玉から宮崎に越してきたばかりの時、どちらも塞がっている宮崎のエスカレータをみて、子供たちがひどく困惑していたのを覚えている。彼らは物心ついたときから、エスカレータとは左側に寄って乗るものだと思って生きてきたので、両側に止まって人が乗っている風景に強烈な違和感を感じたようだ。
■片側空けが揺らがない理由
そもそも急ぐ人のために片側を空けるという行為は、輸送効率のためだとされている。だがこの行為が揺るぎない状態に定着したのは、そういう理由からではないのではなかろうか。
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