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ネットからリアルへ。川井拓也さんに聞く、「モノとコトの融合」(5)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


今月の対談は、「絶滅メディア博物館」館長、川井拓也さんにお願いししている。

動画配信スタジオとして持て余していていた高円寺の拠点を、「原稿執筆カフェ」に改装して大ヒット。期間限定の「確定申告カフェ」もスマッシュヒットを見せ、レンタルオフィスともコワーキングスペースとも違う形の仕事拠点を開拓した。

そこから発想を経て、「絶滅メディア博物館」に繋がっていく。コデラも先日のInterBEE出張の際に訪れてみたところだが、今回からいよいよ「絶滅メディア博物館」のお話を伺っていく。


小寺:この間ね、テレビ見てたら、山手線の駅ごとに名店を見るみたいな番組やっていて。

川井:観てくれましたか!

小寺:「絶滅メディア博物館」が出てきたんだよ(笑)。

川井:神田の名所になってました。

小寺:神田の名所なんだ、あそこ!と思って(笑)。

川井:ブッ!って吹くでしょ、あれ。コーヒー吹く(笑)。

小寺:俺、ここの館長知ってる!つって子供達に自慢しましたよ(笑)。

川井:いや、本当ありがたいですね。あれも元々は構想としてはガジェット博物館だったんですね。で、ガジェット博物館という構想でいろんな人に寄贈してもらってたんだけど、なんかしっくりこなかったんですよ。“ガジェット”というのがすごくオタクっぽいし、ギークっぽいし。“ガジェット”って言ったときになにか広がる感じがしなかった。

で、ある時に、ガジェットと言うとどうしてもカメラとか機械のほうを想像するから。カメラってキヤノン派かニコン派かみたいな、どうしても宗教論争になるから。なんか狭い方向に集約するみたいなイメージがあって。僕はガジェット博物館じゃダメだなと思ってたときに、そういえば、ベータマックスとかVHSとか、機械に入れて撮るメディア側を集めてなかったと。カメラとかいっぱい集めたのに。

だから、古いカセットテープとか、ビデオテープとか、CD-ROMとか、フロッピーディスクとか、スマートメディアとか……今は使ってない、絶滅したメディアを皆さん、僕に寄贈してくださいと。そしたら、将来博物館にしますから、というツイートをしたんですよ。大体僕はツイートがヒットするとやるんだな、今までのパターンでいうと。

小寺:(笑)。

川井:で、みんなが「何、絶滅したメディア? これはどうだ、あれはどうだ」って投稿するわけですよ。うん、確かにそれもあったね、これもあったねってすごい盛り上がって。そうか、記憶としてはメディア側のほうが、みんなが自分のものを入れるわけだから。そのデバイスがニコンかキヤノンかどうでもよくて。あれがエラーして大変なことになったんだよ、とかね、そういうの全員にあるじゃないですか。

だから、“絶滅”ってみんなに問いかけた時に、その“絶滅”というのは人によって違う。これも絶滅だよねという人もいるし、それは絶滅してないぞ、まだフロッピーはドライブがあれば使えるではないか、みたいな論争が起こるのも面白いなと。コンテンツとして。

小寺:(笑)。

川井:だからもう、委ねちゃうというか。こちらが定義して、産業文化遺産みたいに、こういう基準を満たしたら絶滅メディアである、公式企業が最後のメディア生産から撤退して10年が経ったものを絶滅メディアと言おう、とか言ったらつまんないじゃないですか。それをみんながとんちのように、絶滅メディアってなんだ? モワモワモワ…と、考えてくれただけでこれはもう成功だ、いける!と。

それで今、アクセル、ギアが2速ぐらいで、今全速力で、ブーン!って、6000回転ぐらいでやってるわけです。

小寺:6000回転なの?(笑)

川井:そう(笑)。もう次ね、3速いけそうなんで、だいぶ、もう3000回転ぐらいでいいです。

■記憶を展示する場所

小寺:絶滅メディア博物館が面白いのは、一般の博物館って、恐竜を展示しますとか平安の絵巻を展示しますみたいなことになって、それをリアルタイムで知ってる人って誰もいない状況じゃないですか。でも、絶滅メディア博物館は、リアルタイムでそれを知ってる人が現存していて、それと知らない人が出会っちゃうという、そういうところがやっぱり普通の博物館とは明らかに違いますよね。

川井:そうですね。特に休日に親子で来る方なんかは、もうお父さんが学芸員のように、「これがフロッピーと言ってな」なんて、まさに僕が説明しなくてもそこにコミュニケーションが成立していたり、お友達同士で来ると、世代が違うカップルなんかも、MD世代とカセット世代なんかが来ると、それぞれの話をして、非常に盛り上がって帰る。

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