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小寺の論壇:テレビ資本再編が始まる? 系列統合が示すもの

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


11月29日、日本テレビホールディングスは、同社系列の基幹局4社を経営統合すると発表した。テレビではNHKぐらいしか報じていないが、経済紙は積極的に報じているようだ。

これまでも地方局の経営が難しくなっていることは指摘されていたが、今回経営統合するのは、札幌テレビ放送、中京テレビ放送、読売テレビ放送、福岡放送。県域放送局ではなく、広域放送局である。特に中京テレビと読売テレビは番組制作能力も高く、全国放送番組もある。いわゆる系列主幹局だ。

直接、日本テレビホールディングス傘下に入るのではなく、4社でいったん「読売中京FSホールディングス」という持株会社を作り、4社はそこの100%子会社となる。この「読売中京FSホールディングス」に対して、日本テレビホールディングスが出資するという、二重構造になっている。

さらには読売新聞もここに出資する。つまりこの4社の従来の株主をまとめて、新会社に出資してもらおうというわけである。1社に出資するより、4社束になったところに出資した方が、経営の安定性は高まる。一方4社は経営統合により、協力関係が築けることになる。

経済紙では、場所が離れた4局の経営統合の意味合いがよく見えていないように思える。寄り合いするなら、場所が近くないと意味がないように見えるからだ。

一方で技術屋からみると、「ははーん」というところが見える。筆者の見立てでは、今回の経営統合の意味は、単に資本の話だけではない。

■経営統合する意味

これまで日本の放送行政は、「マスメディア集中排除原則」で運営されてきた。「マスメディア集中排除原則」とは、単一の企業が複数のテレビ局を経済的に支配することを禁止し、偏った報道や放送が行なれないようにするという方法論である。つまり各放送局は、それぞれが異なる株主を持ち、独立採算である必要があったわけだ。

だがこれでは、地方局の株主となる地元企業が弱体化すると、一緒に倒れてしまう。そこで2008年に放送法が改正され、認定放送持株会社制度が導入された。これにより、キー局が傘下の地方ネット局に出資し、経営を安定化させることとなった。総務省では段階的にこうした規制緩和を進めている。ただこれまで、複数の放送局が、1つの持株会社の100%子会社になったことはなかった。今回の日テレ系列4局統合が、初めての事例となる。

技術的に見れば、これまでのように地方局独立採算では、どうしてもできないことがある。それは北欧などのテレビ局に見られる、IP網を用いた「リソースシェアリング」だ。

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