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小寺の論壇:2025年にビデオテープが見られなくなる!? 噂の真相はいかに
知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。
ネットニュースでは、11月27日あたりから急速に「2025年にビデオテープが見られなくなる」という主旨の記事が大量に出回り始めた。「2025年問題」だという。
話の出所は、11月26日にTBSのニュース番組「THE TIME」で特集が組まれたからのようだ。つまりネットの記事はどれも、テレビの後追いというわけである。
そもそも2025年にビデオテープが見られなくなるという根拠はなんなのか。
2025年問題というキャッチーなフレーズをアピールし始めたのは、どうも「カメラのキタムラ」のようだ。同社はもちろんカメラ販売店ではあるのだが、現在はプリントや映像ダビングといったサービスが主力になりつつある。
曰く、ビデオテープの寿命はおよそ20年と言われており、すでに全盛期から20年以上が経過している。デッキ製造も2016年に終了しており、今後永久に再生できなくなる可能性が高まっているという。2025年といえば来年で、駆け込み需要としては今年が最後のチャンスというわけだ。
だがこの話、それほど急に降って湧いた話なのか。もう少し追っていくと、その大元は国連教育科学文化機関(ユネスコ)と国際音声・視聴覚アーカイブ協会(IASA)が2019年7月に共同で出した、「マグネティック・テープ・アラート」というプロジェクトが元になっている。
・Magnetic Tape Alert Project supported by IFAP
https://www.unesco.org/en/articles/magnetic-tape-alert-project-supported-ifap
原文をあたってみると、
『人類の言語的、分化的知識は過去60年間に制作された磁気テープ記録に大きく基づいているが、テープという方式が時代遅れになると音もに、動作可能な再生機器も急速に姿を消している。保守部品の供給やリペアサービスも衰退しており、このペースでいくと磁気テープ記録は2025年ごろに停止する可能性がある。これらの映像と音声を長期的に保存し、将来の世代がアクセスできるように、これらをデジタル化して安全なデジタルリポジトリに転送することである。』
という警鐘であった。発表当時、検索した限りこれを取り上げたメディアは見つからず、映画保存協会のようなサイトで取り上げられるに過ぎなかった。とはいえ、いわゆるダビング事業者を中心にときおりプレスリリースが出されており、そういう意味では定期的に警鐘は発せられていたが、なかなかマスメディアに捕捉されなかったのだろう。そういう意味では、2025年問題というキャッチーなフレーズを考え出したことは、効果があったといえる。
筆者はテレビ番組編集者として、一般の人よりも多く磁気テープを扱ってきた。この磁気テープ問題、プロはどうしているのかという話と、一般の人にとっては何が問題で、どうするべきかということを考えてみたい。
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